2006年6月24日(土)「しんぶん赤旗」

難航するWTO農業交渉(上)

危機あおり決断迫る


 足かけ七年にわたるWTO(世界貿易機関)農業交渉が、正念場を迎えています。二十二日、農業交渉の議長が自由化基準の合意案を示し、来週にはジュネーブで閣僚会議が開かれます。日本経団連も二十日、農業の自由化などで六月末までに政治決断を求める提案を発表しています。一方、全国農協中央会は二十三日、「多様な各国農業が共存できる貿易ルール」の実現を求めて、全国集会を開きました。農業交渉の現局面と日本農業への影響、運動方向を探りました。(国民運動委員会・橋本正一)


 WTO農業交渉は二〇〇一年にスタートした多角的貿易交渉(ドーハラウンド)の一分野です。交渉には百四十九の国と地域が参加し、農業のほか鉱工業品、サービス、知的所有権、貿易と環境など多くの分野を含んでいます。

 交渉は、当初の期限とされた昨年十二月の香港閣僚会議に続いて、先送りされた今年四月末にも自由化基準(モダリティ)を確定できず、五月以降、集中的な交渉を繰り返してきました。

 WTOのラミー事務局長は「七月末を逃すと交渉全体が一、二年は止まってしまう」と危機感をあおり、六月末に主要国の閣僚会議を呼びかけ、“政治決断”を迫ってきました。

関税で隔たり

 農業交渉は、市場アクセス(関税削減など)、国内支持(貿易をゆがめる国内補助金の削減)、輸出競争(輸出補助金の撤廃など)の三分野を中心にすすめられてきました。

 市場アクセスの分野では、(1)関税水準が高い品目ほど削減率を大きくする(2)一定数の重要品目については一般品目より削減率を小さくする―などを合意していますが、関税の削減率や重要品目の数などでは輸出国・輸入国間で隔たりが大きくなっています。

 とくに、すべての農産物関税を一定水準以下に抑える「上限関税」の導入や重要品目の数では大きな対立があります。

国内産が打撃

 アメリカが求める上限関税の率は75%です。どんなに高い関税率が認められている農産物でも、75%以下に下げることになります。日本の米にあてはめると、現行税率(778%)の十分の一以下という劇的な引き下げです。

 現在の輸入価格(十キロ約五百円)に75%の関税を上乗せしても、国産米の卸売り価格(平均三千五百円)をはるかに下回り、国内の米生産が壊滅的な打撃を受けることは明らかです。輸入国の農業の存在を無視するものです。

 ブラジルなど輸出力がある有力途上国グループ(G20)が要求する上限関税100%でも、事態は同じです。

 アメリカなどは重要品目の数を関税分類上の全品目の1%にすることも要求しています。

 日本の場合、農産物品目数は千三百二十六、米だけでも十七あります。重要品目を1%に限ったのでは、米さえもカバーできません。小麦や乳製品など高関税品目は、一般品目なみに大幅な関税削減を強いられ、国内産が打撃を受けるのは必至です。(つづく)


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