2006年6月21日(水)「しんぶん赤旗」

政府・与党が少子化対策

出産費用の負担軽減検討


 政府・与党は二十日、首相官邸で、関係閣僚と与党幹部による少子化対策協議会と、全閣僚で構成する少子化社会対策会議(会長・小泉純一郎首相)を開き、出産費用の負担軽減などの検討を盛り込んだ「新しい少子化対策について」を決定しました。七月に閣議決定する「骨太の方針」に反映させます。

 「対策」では、二〇〇五年の合計特殊出生率が一・二五と過去最低を記録したことにふれ、「従来の対策のみでは、少子化の流れを変えることはできなかったことを深刻に受け止める必要がある」と指摘。「社会全体の意識改革」や、「子どもと家族を大切にするという視点に立った施策の拡充」が必要としています。

 具体的な施策として、(1)出産育児一時金の支払い手続きの改善や妊娠中の健診費用の負担軽減などの「子育て支援策」(2)若者の就労支援やパートタイム労働者の均衡処遇の推進、労働契約法の制定など「働き方の改革」(3)子育てを支援する税制等をあげています。

 また、「家族・地域の絆(きずな)を再生する国民運動」や「家族の日」の制定などを掲げています。

 これらの諸施策の財源を含め、制度の具体化については、「歳出歳入一体改革の中で必要な財源の確保とあわせ、平成十九年度(〇七年度)予算編成過程において検討する」としており、年末の予算編成まで見送りました。


解説

実効性には疑問

 過去最低の「出生率1・25」ショックの前に、政府・与党は、従来の「少子化対策」の限界を認めざるをえませんでした。

 「新しい対策」に盛り込まれている施策には、出産費用の負担軽減など、子育て世代の要求を一定反映したものも含まれています。内閣府の調査でも「少子化対策として重要なのは?」の問いに、「経済的支援措置」と答えた女性は69・9%にものぼっています。

 しかし、本当に実効性ある「少子化対策」になるかというと、疑問といわざるをえません。「子育て支援策」でも、最も経済的支援を必要とする子どもの中学生・高校生・大学生期になると、「奨学金の充実等」があるだけです。

 また、働き方について「長時間労働の是正」をいうものの、そこには、雇用の流動化、不安定化に拍車をかける「多様な働き方の設定を可能とするための労働契約法の制定」の検討が含まれています。大企業を中心にしたリストラ、雇用の流動化と不安定化を推進して、子育て世代の失業、低賃金、長時間労働をもたらし、子育て環境を悪化させた小泉「改革」を見直す観点はありません。

 相次ぐ社会保障改革で、医療費の負担増、年金保険料引き上げなど、子育て世代の経済的負担を増やしてきたのも、小泉「改革」です。

 五月の経済財政諮問会議で、日本経団連の奥田碩前会長らが提出した「少子化対策について」では、「子どもは『国の宝』であり、経済成長等の外部効果をももたらす」など、財界・大企業の利益優先の立場が露骨に示されています。求められているのは、自らの利益のため労働者を「使い捨て」にし、子育て環境を悪化させてきた大企業中心主義の転換です。


もどる
日本共産党ホーム「しんぶん赤旗」ご利用にあたって
(c)日本共産党中央委員会
151-8586 東京都渋谷区千駄ヶ谷4-26-7 TEL 03-3403-6111  FAX 03-5474-8358 Mail info@jcp.or.jp