2006年6月21日(水)「しんぶん赤旗」

タクシー

「運転者登録制に」

国交省小委提言 安全確保へ全国導入


 規制緩和後のタクシーのあり方を検討してきた国土交通省の「タクシーサービスの将来ビジョン小委員会」は二十日、報告書をまとめました。規制緩和を肯定しながらも、現状については「全体としてはむしろサービスの質・安全性の低下のおそれ」があると指摘。輸送の安全と運転者の質の確保に向け、運転者登録制度の全国的な導入などを提言しました。

 タクシーは二〇〇二年に規制緩和され、競争激化で運転者の労働環境が悪化し、交通事故が多発するなど社会問題になっていました。

 地理試験の受験を伴う運転者登録制度は現在、東京都と大阪府の一部で実施。全国的な導入に向け、当面は政令指定都市まで拡大する、としています。来年の通常国会に改正案を提出予定です。

 報告書はまた、八月から過労運転などをさせた事業者は直ちに停止処分を行うなど監査の強化や労働関係法令違反への対応強化、累進歩合制の廃止の徹底、労働力コストを含めた運賃審査など、安全輸送を確保するための施策を提案しています。

 自交総連書記長の今村天次委員は二十日の会合で、規制緩和の実態を踏まえた具体的施策になるよう指摘。国家資格としてのタクシー運転免許制度の検討を報告書に明記するよう求めました。

 同小委員会は昨年十月に設置。八回の会合で報告書をまとめました。


解説

「規制緩和万能」論と決別を

 タクシーサービスの将来ビジョン小委員会報告は、労働者や経営者、利用者の世論や運動を反映して、「規制緩和万能」論からの転換を求めるものとして注目されます。

 規制緩和で「サービスの質・安全性の低下の恐れがある」と指摘。「市場の失敗」があり、「政府による適切な対応が必要」とのべたことは、一歩踏み込んだ内容です。

 具体策として、運転者の登録制度の全国的な導入、運賃値下げ競争を規制するため労働力コストを含めた運賃審査などが盛り込まれたのも、評価できるものです。

 しかし、問題のある業者が温存されない仕組みをつくるといいながら、悪質業者が排除されず実効性が乏しい事業者のランク制などの施策にとどまったことは問題です。転換を求めながら、これまでの需給規制による台数管理に戻ることは「産業の活力をそぐ」とする限界がうかがえます。

 労働組合や事業者からは、サービスと安全確保のためタクシー運転免許の導入を求める声が広がっています。イギリスではこれによって無秩序な競争が規制され、サービスと安全輸送で世界一といわれています。規制緩和ときっぱり決別し、抜本的な施策に踏み出すことが求められています。


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