2006年6月14日(水)「しんぶん赤旗」

医療改悪法案強行 参院委

「痛み」当然視する小泉「改革」の行きつく先


 小泉内閣としての最後の国会で、衆参合わせてわずか二カ月余りで審議が打ち切られ、自民、公明によって委員会採決が強行された医療改悪法案。法案は、その内容も、審議のあり方も、国民に対する絶え間ない「痛み」の押しつけ、議会制民主主義の破壊に終始した小泉内閣の五年間を象徴するものでした。

 高齢者の患者負担の引き上げが、受診抑制を招き、深刻な健康被害をもたらすという日本共産党の追及に、何の根拠も示さず「必要な医療は妨げられない」と繰り返すだけの川崎二郎厚労相。七十五歳以上を対象にした「後期高齢者医療制度」では、低年金の人も含めた全高齢者からの保険料徴収、滞納者からの保険証取り上げを合理化したうえ、医療の質を低める「差別医療」の可能性まで否定しませんでした。

 参考人質疑、地方公聴会で患者の「追い出し」につながると批判が集中し、与党議員からも疑問、懸念が相次いだ療養病床の大幅削減では、入院患者の半数が「医療の必要性が低い」かのように見せかけるため、厚労省がデータの“改ざん”までおこなっていたことが明らかになりました。

 改悪法案の成立を待たず、すでに療養病床の廃止を決めた病院も出ており、事実上の患者「追い出し」が始まっています。七月からの診療報酬改定で、患者の半数を占める「医療区分1」の点数が大幅に引き下げられれば、「追い出し」が本格化するのは必至です。

 これだけ、国民、患者に「痛み」を押しつけるにもかかわらず、採決の場面に小泉純一郎首相の姿はありませんでした。就任当初から「『痛み』に耐えてあすをよくしよう」とくりかえしてきた小泉首相。医療改悪法案の審議で明らかになったのは、「痛み」の先にあるのが、際限ない国民への負担増と給付削減、「痛み」の押しつけでしかありませんでした。参院の委員会審議に一度も出席できなかったことからは、“説明不能”に陥った首相の姿が垣間見えます。

 国民のいのちと生活、健康を守るというのは、政治の最も大事な責任です。

 採決の賛成討論で与党議員が、改悪案を「安心、安全の医療制度を子や孫の世代まで引き継ぐために必要な改革だ」とのべたとき、審議を熱心に見守る人で埋め尽くされた傍聴席からは、あぜんとする声とざわめきが起こりました。

 国民、患者、医療関係者の怒りと、健康に生きたいという願いは確固として存在しています。自民、公明の小泉内閣が「数の暴力」で改悪案を強行しても、国民との矛盾を深め、安心・安全の医療と国民皆保険制度を守る世論と運動はいっそう広がっていくことでしょう。(山岸嘉昭)


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