2006年6月8日(木)「しんぶん赤旗」

村上ファンド

背後に オリックス


 証券取引法違反(インサイダー取引)で逮捕された村上世彰容疑者が代表を務めていた「村上ファンド」の背後に、大手リース「オリックス」がいたと指摘されています。規制緩和をすすめた規制改革・民間開放推進会議の宮内義彦議長が会長を務めるオリックスと、村上ファンドの関係は、役員(ヒト)、会社(モノ)、資本(カネ)――と全面的で密接なものでした。


 千葉県船橋市に「セミナーハウス、クロスウェーブ」という巨大な建物があります。講堂や大小の会議室、研修室、ホテル並みの宿泊室を完備した企業向け研修施設で、運営するのはオリックスグループ(100%子会社)の「ブルーウェーブ」。村上ファンドの中核コンサルティング会社「M&Aコンサルティング」(M&A社)は、この場所で生まれました。

 M&A社と前商号の「エム・エイ・シー」(エム社)の成り立ちを法人登記からたどると、立ち上げた際の本店所在地が、この「クロスウェーブ」所在地。M&A社(エム社)は会社自体、オリックスの会社を前身としていました。

グループの役員がずらり

 その会社は施設名と同じ「クロス・ウェーブ株式会社」。休眠会社だったといわれますが、役員には現オリックス副社長ら、オリックスグループの役員がずらりと名をそろえていました。目的は「教育研修会場および宿泊施設の運営」など。同社は、二〇〇〇年一月に商号をエム社に変更し、村上世彰容疑者が代表取締役に就任。「村上ファンド」立ち上げで会社の目的も役員もがらりと変わりました。

 しかし、エム社は同年十二月までの約一年間、本店所在地を研修施設クロス・ウェーブに残しました。

 M&A社立ち上げとともに、オリックスから取締役が入り、初代はオリックス社長室長(現「オリックス・クレジット」社長。〇二年五月まで)。同社からの役員はことし五月十六日に辞任するまで三代続きます。

 村上ファンドのもうひとつの中核会社だった「MACアセットマネジメント」。ニッポン放送株のインサイダー取引で株を売買した投資顧問会社ですが、オリックスは同社にも、設立後まもなく現「クレジット」社社長を送りこみ、ことし五月十六日に三代目の役員が辞任するまで取締役を派遣し続けました。

 村上ファンドの二つの中核会社。その両方にオリックスグループ役員が入っていたのです。

支援は「会社」「人」「お金」も

 オリックスの村上ファンド“支援”は、「会社」と「人」だけではなく、「お金」でもありました。

 オリックスは、MAC社設立に約四千万円を出資。日本証券投資顧問業協会の資料(〇五年版)には、オリックスが同社の45%の株主と明記されています。

 報道によると、オリックスは村上ファンドの運用の元手として三億円を出資。その投資資金は百億円超まで増えているといいます。

 MAC社はインサイダー取引の“主役”。大量保有報告書によると、M&A社も、村上ファンドグループの投資事業組合から〇四年三月までに、ニッポン放送株の9・31%を借株し、インサイダー取引容疑で株を売り抜けたと見られる時期の昨年二月十五日に返却していました。

 オリックスと村上ファンドの関係は、オリックスの宮内義彦会長が、村上容疑者が通産省の役人だったときに知り合ったのがきっかけで、出資などにつながったとされます。宮内会長は現在、規制改革・民間開放推進会議議長で、投資ファンドが活動することを推進してきました。

 オリックスは五月十二日、MAC社への出資金引きあげを表明。実際役員は辞任しています。しかし、“問題が起きたから切る”で済むのか――。

 オリックスは「担当者が不在でコメントできない」(広報グループ)としています。


宮内氏

規制緩和の旗振り役

 村上世彰容疑者が運営した「村上ファンド」は、新聞広告などで不特定多数から投資を募る「公募ファンド」ではなく、少数の投資家だけから資金を受けて運用する「私募ファンド」と呼ばれる仕組みです。私募ファンドは一九九八年十二月施行の金融システム改革関連法で設立できるようになりました。

 この規制緩和を政府に提言したのは、政府の行政改革推進本部に設置された規制緩和委員会。その委員長を務めていたのがオリックス現会長の宮内義彦氏でした。村上ファンドは、宮内氏が旗振り役を務めた規制緩和策があってこそ誕生したといえます。

 規制緩和委員会はその後、数年ごとに改組と改称を繰り返しながら、現在の「規制改革・民間開放推進会議」へとつながります。宮内氏は九六年以来一貫してその委員長や議長を務め、規制緩和の「推進母体組織」を率いています。

 政府の「貯蓄から投資へ」のスローガンのもと、この組織はその後も金融市場の規制緩和を推進。株式売買委託手数料率の自由化などを提言してきました。今年一月に証券取引法違反容疑で摘発されたライブドア(東京都港区)が自社の時価総額をつり上げるために駆使した「株式分割」などの手法も、規制緩和の結果可能になりました。


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