2006年6月6日(火)「しんぶん赤旗」

利益追求 手段選ばず

村上代表逮捕

法の抜け穴を駆使

株売買の実態 闇の中


 阪神電鉄、TBSなどの株買い占め劇を繰り返したすえ、ニッポン放送株売買でのインサイダー取引を認め、逮捕された「村上ファンド」の村上世彰容疑者。運用資金四千億円といわれるまで急成長する裏で、最大限の利益をあげるため、法と規制の抜け穴を巧妙につく手法を駆使しました。


 ニッポン放送株のインサイダー取引があったとされる二〇〇四年十一月から、〇五年三月末までに、村上ファンドが関東財務局に提出した同放送株の「大量保有報告書」(変更報告書)は、わずか五通しかありません。

 うち四通は保有割合が13・54%→14・71%→16・01%→18・57%と増え、同放送株を買い進めたことを示しています。今回の容疑は、村上容疑者がこの時すでにライブドアの同放送株買収を知っていたというもの。買い増しの最後の報告は〇五年一月十三日でした。

 ところが、五通目が提出されたのは二カ月後の三月十五日。株の保有割合は一気に3・44%まで下がっていました。

 二月八日、ライブドアがニッポン放送株を約35%取得したと発表し、株価は高騰しました。村上容疑者は二月末までに株を大量に売り抜け、巨額の利益を得たとされていますが、だれでも閲覧可能な大量保有報告書では、いつ売ったのか、いくら利益を上げたのかは闇のなか…。

 「静かに買い進めて、売り抜けも隠す“サイレント作戦”がうまくいったということ。証券取引法の抜け道を最大限巧妙についたのが村上容疑者の特徴です」と、株式市場にくわしいジャーナリストの淡路英司氏はいいます。

 証券取引法は、上場企業の株式を5%超取得した者に、「五営業日以内」に財務局へ大量保有報告書を提出することを義務付けています。しかし、村上ファンドは投資顧問会社として「特例」が認められており、10%超を保有しなければ、「五営業日以内」に提出する必要はありません。しかも、売買状況の記載はいらず、株の保有割合の記載だけで済みます。

 村上ファンドはニッポン放送株の売却の際に、保有割合を10%未満まで減らし、「特例」の身分を活用。義務付けられた「翌月十五日」ぎりぎりまで報告を遅らせ、売買状況も記載していません。

 村上ファンドは、大阪証券取引所の株式取得(〇五年四月)で比率を9・998%にとどめ、「特例」内にいることにこだわったことも。保有株が1%以上の変動があると、変更報告が義務付けられるため、売買を1%未満にとどめることも多用しました。

 四通の買い進めた大量保有報告書も、「五営業日以内」の期限いっぱいまで待ったうえで、提出されていました。「村上ファンドが買っているとわかると、ちょうちん買い(便乗した買い)がつく」(証券関係者)ため、「買い進めているときに株価が上がったら損なので、隠す」(淡路氏)――。

 法のぎりぎりをついた末に、ふみこんだ違法なインサイダー取引。大阪証券労働組合の澤田信正書記次長は「村上ファンドは、もうかるなら何でもやる、という種類のファンド。インサイダーは線引きが難しいものだが、インサイダーがらみの情報で動き、ときには法をおかす商売になっているということです。本来は許されない行為です」と語ります。


もどる
日本共産党ホーム「しんぶん赤旗」ご利用にあたって
(c)日本共産党中央委員会
151-8586 東京都渋谷区千駄ヶ谷4-26-7 TEL 03-3403-6111  FAX 03-5474-8358 Mail info@jcp.or.jp