2006年6月6日(火)「しんぶん赤旗」

国策に従う教師でいいのか


 教育基本法の改悪を許さないたたかいが、全国で急速に盛り上がりつつあります。全教、日教組の枠を超えて広がる教職員の共同のとりくみや、日本共産党議員らと教育委員会・学校関係者との申し入れ・懇談の特徴をまとめました。


岩手

 「子どもたちに平和な未来を約束しよう」。新緑が雨に光る盛岡市の繁華街にこだまします。「教育基本法を守る岩手の会」が五月二十八日、「教育基本法改悪を止めよう!県民大集会」後のデモ行進での光景です。

 デモには六百人が参加。先頭を歩いた岩手県教職員組合(岩教組、日教組加盟)の砂金文昭委員長はいいます。「教基法改悪案が成立すれば、教育が再び国家の管理におかれ、戦後の民主主義が覆されます。県民世論を改悪阻止の方向へ大きく結集しなければならない。今日の集会はそのための二歩目、三歩目となったのでは…」

運動ひとつに

 「教育基本法を守る岩手の会」は、教育基本法改悪反対の一点で結成された共同の組織。全労連加盟のいわて労連議長や、連合加盟の岩教組委員長、岩手高教組委員長、元連合岩手会長らが世話人をつとめています。呼びかけ人には、県生協連合会会長理事や県地域婦人団体協議会会長、盛岡市在住の直木賞作家(高橋克彦さん)らが名前を連ねています。

 三回目となるこの日の集会には、全教の石元巌委員長、日教組の森越康雄委員長もそれぞれメッセージをよせました。

 いわて労連の菅野恒信議長は「岩手県にも『愛国心』を評価する通知表があることがわかり、大船渡市では見直すことを教育長が表明しました。教育は県民一人ひとりの問題。県労連としても、廃案に追い込むまでたたかう」と話します。

 会が結成されたのは、昨年六月。県内では「教育を考える県民の集い」が二十一年間にわたって毎年開かれるなど、さまざまな教育運動がありましたが、各団体がばらばらに運動をすすめている状況でした。教育基本法を変えようという動きに「幅広い共同による運動をすすめないと改悪の流れはとめられない」と声があがり始めました。

 岩教組の元副委員長の野上麻吉さん(72)も声をあげた一人でした。

 野上さんは国民学校五年生のとき学童疎開。「決戦参加」と書かれた疎開時のコピーを手に、語ります。「徹底した軍国主義教育を受けた私は、『国』のために命を投げ出すのは当然と思っていた。戦後、それまで使っていた教科書の墨塗りをさせられた。これもうそなのか、これも間違いなのかとショックでした。自分という積み木が崩れていくようでした。そのとき教師は多くを語りませんでした。どういう思いだったのでしょうか」

 野上さんが示す学童疎開中の「大東亜戦争完遂学芸会」のプログラムには、「轟(ごう)沈」「予科練の歌」「月月火水木金金」などの軍歌が並んでいました。

考える力育てる

 やがて小学校教員の道を選んだ野上さん。先輩教師たちは、「師範学校とは“死範”学校である。“死ぬ模範”を教えよ」と教員養成され、教え子を戦場に送った体験をもっていました。

 自民、民主の国会議員でつくる「教育基本法改正促進委員会」で「お国のために命を投げ出してもかまわない日本人を生み出す」という発言が飛び出したときには、怒りがこみあげました。

 「教基法改悪は、その時々の政府の考えで教育を変えることができるようにするもの。そのときに“時代の流れ”とあきらめ、国策に従う教師でいいのか」と野上さん。会の呼びかけ人や事務局員を募って奔走します。

 会の代表の武田晃二・岩手大学教授(教育学)は話します。「もっとも人間らしい人間を育てていくのが教育。どのような『愛国心』をもつかを含め、自分の頭で考える力をはぐくむのが教育です。教育の問題というのは誰にとっても無関心でいられないはず。ですからお互いに理解し合うことができるし、そのエネルギーは組織上の問題も乗り越えていくことができるんだと思います」(内野健太郎)


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