2006年6月6日(火)「しんぶん赤旗」

主張

出生率1.25

若者に展望示す少子化対策を


 日本の少子化傾向にいっこうに歯止めがかかりません。女性が一生に産む子どもの平均数(合計特殊出生率)が昨年一・二五となり、過去最低を五年連続で更新しました。憂慮すべき深刻な事態です。

打開の意気込みがない

 ところが、この事態を深刻に受け止め、打開しようという意気込みが小泉内閣に感じられません。出生率発表後の閣僚懇談会では、小泉首相や閣僚から、何も発言が「ありません」(六月二日の厚労相記者会見)でした。

 川崎厚生労働相は、深刻といいながらも、結婚件数が上昇傾向にあることや今年の出生数が前年を上回る水準で推移していることをあげて「一部に明るい兆しもみられる」とまでいいました。

 少子化の進行は、日本社会の基盤をゆるがす重大問題です。将来の労働力や社会保障にも大きな影響を与えます。

 子育てへの障害をつくりだす政治のあり方が問われているのです。労働法制の規制緩和による働くルールの破壊、子育て世代への増税や負担増、保育料の値上げや保育サービスの後退など、小泉「改革」によるゆがみが、少子化を加速させています。

 政府の少子化社会白書でも、少子化の要因として、若者の不安定雇用と低賃金、子育て世代の長時間労働、経済的負担の増大をあげています。

 小泉内閣発足以来、出生率は下がり続けています。少子化対策の目玉としてきた保育所の待機児童ゼロ作戦も失敗に終わっています。

 「一・五七ショック」(一九九〇年)に続く「一・二五ショック」といわれているのに、若者と国民に何のメッセージも出せない小泉首相の姿勢は、日本社会の将来にたいする責任の放棄さえ感じさせます。

 出生率の低下は“先進国共通の現象で、いかなる対策をうっても、高い出生率は期待できない”とあきらめの声もあります。しかし、欧州の国々では、落ち込んだ出生率を引き上げることに成功しています。

 仕事と子育ての両立をはかり、性や雇用形態による差別をなくす均等待遇推進の雇用政策、経済的負担を減らす家族政策など総合的な視点から社会のあり方を変える位置づけで、とりくみをすすめています。

 たとえば、出生率が過去最低だった一・二四(一九九四年)から、一・三六(二〇〇四年)に回復したドイツでは、女性に多くの負担を強いてきた子育ての現状を変えようと、保育所の拡充と育児休業手当の引き上げを打ち出しています。育児休業手当を現行の定額(約六万六千円)から、収入の67%(上限は約二十六万円)保障にして、育児休業の取得率が5%とあまりにも低い父親の、育児参加を促そうというのです。

 出生率が一九九〇年代の一・六台から二〇〇五年には一・九四に回復したフランスでは、出産後も働く女性が多く、男女ともに労働時間が短く、手厚くきめ細かい家族手当があります。

 子どもを産みやすく、育てやすい社会にしていこうとする姿勢が、これらの施策から伝わってきます。

希望ある未来を

 日本では、自公政権が、少子化問題を増税や高齢者の医療・介護・年金の切り捨ての脅しに使います。これでは若者は、子どもたちの未来が自分たちよりもよくなっていくという希望をもつことができません。大切なことは、国が少子化対策に本腰を入れてとりくみ、未来ある社会をつくろうとしているかどうかです。


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