2006年6月4日(日)「しんぶん赤旗」

村上ファンド 何が問題


 投資ファンド「村上ファンド」を率いる村上世彰氏に捜査の手が及んでいます。証券取引法違反(インサイダー取引)の疑い。ファンドって何なのか。何が問われているのか。問答形式で考えてみました。

Q 投資ファンドってどういうものですか

  ファンドというのは英語で基金、元になるお金のこと。投資ファンドとは、お金をもうけたいと思っている人や会社から資金を集めて、そのお金を元手に株などに投資して、代わりにもうける仕組みのことです。

 投資ファンドが投資の対象にするものは株以外にも公社債、不動産など。株式投資の場合、投資ファンドは、これから株の値段が上がりそうな会社を選んで株を買い、値段が上がったら今度は売ります。安く買って高く売り、もうけたお金は資金を出した人と投資ファンドが分配します。

 同ファンドには国内の年金基金のほか、海外からの資金も流入しています。

 「村上ファンド」の運用資金は約四千億円とみられています。その大部分が株式投資に向けられています。同ファンドは、上場株式を大量に買い集めて大株主になり、相手企業に増配や自社株買いなどを求めて株価をつり上げ、莫大(ばくだい)な売却益を手にするという手法で急成長を図ってきました。

 「村上ファンド」が現在、発行済み株式総数の5%以上を保有している企業は二十一社に上ります。

Q どうやってもうけるの阪神株はどうなるのか

  「村上ファンド」が大量に保有している株式銘柄のうち、もっとも保有比率が高いのが阪神電鉄です(46・82%保有)。

 その阪神電鉄株の買い手として名乗りを上げたのが、阪神との経営統合をめざす阪急ホールディングス。いま阪神株の株式公開買い付け(TOB)の行方に注目が集まっています。

 「村上ファンド」側は阪急がすでに示している価格(一株九百三十円)で、TOBに応募する方向で、今週半ばにも両者が合意する見通しです。

 阪急側は「村上ファンド」が保有する阪神株をすべて買い取ることをねらっています。このTOBが成立して阪急側に阪神株が売却された場合、「村上ファンド」には四百―五百億円の利益が転がり込むものと見られています。

Q インサイダー取引疑惑ってなんですか

  インサイダー取引とは、企業の社員や役員、大株主などが、その職務や地位により得た情報を利用して自社株などを売買することです。

 証券取引法では、第一六六条で会社関係者のインサイダー取引を禁じています。また、第一六七条で公開買い付け(TOB)やそれに準じる行為での関係者のインサイダー取引を規制しています。違反すれば三年以下の懲役もしくは三百万円以下の罰金となります。

 東京地検特捜部が捜査しているのは、「村上ファンド」によるニッポン放送株の売買です。ライブドアは二〇〇五年二月、ニッポン放送株の35%を時間外取引で取得しました。これは、証券取引法上の「TOBに準じる行為」に当たります。村上氏は、ライブドアにニッポン放送株の大量取得を提案しておいて、情報が公開される前に保有するニッポン放送株を売買し、大もうけした疑い。当時、「村上ファンド」は、ニッポン放送株の18%以上を保有していました。

Q マネーゲーム事件の背景に何があるの

  財界や自民党が進めた規制緩和があります。

 村上氏は元通産省(現経済産業省)の官僚です。通商産業研究所法令審査委員として株式交換制度などM&A(企業の合併・買収)の法制業務を担当。「作るべきルールがあまりなくなった」(『日経ビジネス』二〇〇二年二月十八日号)と、一九九九年に通産省をやめ、「村上ファンド」を設立します。

 前年の九八年には、投資信託法が改定され、「村上ファンド」のように、特定か少数の投資家を対象に資金を集めて運用する私募ファンドが設立できるようになっていました。

 マネーゲームがしやすい環境をつくっておいて、みずからが、そのゲームの主役として登場します。

 財界も応援します。「村上ファンド」の設立にさいし、オリックスは約四千万円を出資。オリックスの宮内義彦会長は、政府の規制改革・民間開放推進会議の議長です。

 村上氏は、「ヒルズ族」の兄貴分。堀江貴文・前ライブドア社長が、規制緩和で可能となった錬金術を駆使した「ニッポン放送買収劇」を利用して、ひともうけしたのが、村上氏。規制緩和によるマネーゲームの申し子といえます。


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