2006年6月2日(金)「しんぶん赤旗」

原発制御棒

ひび発生 不可避

保安院報告書 設計変更求める


 原発の出力を調整するハフニウム板型制御棒(東芝製)にひび割れが多発している問題で、経済産業省の原子力安全・保安院は一日までに、調査報告書をまとめました。ハフニウム板型制御棒について「その構造上、使用の継続によって、ひびなどの発生・進展が避けがたい」として、事業者にたいして設計変更などの検討を求めました。

 報告書によると、ハフニウム板型制御棒は全国の沸騰水型原発三十二基のうち二十三基で使用されています。これまでに調査した四百四十二本のうち、六基の原発で使用した制御棒五十九本でひびが確認されました。

 保安院は、東京電力と中部電力が五月二十六日に保安院に報告した原因推定を「妥当」と判断。主な原因とされる(1)一定量をこえる中性子を浴びたことによる割れの発生(照射誘起応力腐食割れ)(2)腐食生成物のたい積(3)ハフニウム板の膨張―といった現象が、いずれも中性子照射量増加にともなって進行することをあげ、「ひびは照射量が増加することにより生じることは明らか」としています。

 報告書は、未解明の劣化現象にたいして、データの継続的蓄積・点検方法や頻度の妥当性を事業者がまじめに実施していなかったと指摘。また「当院としても、詳細に事業者の対応を把握しておくべきだった」と反省する記述もあります。


技術の未熟さ示す

 制御棒は、原子炉の出力制御や核反応を停止するための“ブレーキ”の役割を担っており、欠陥は重大問題です。

 制御棒の“背骨”にあたる構造部材を貫通するひびは、「最悪の場合、制御棒が折れることもありうる」(保安院の担当者)という深刻なものです。また、制御棒が周辺機器と接触してひびがめくれステンレス片がはがれ落ちた例もありました。最大のものは十一センチ×八センチの大きさでした。

 一歩間違えば、制御棒が駆動不能になったり、異物が原子炉内を循環することによって大事故につながるのではないか――。専門家からも心配の声があがっています。

 制御棒の交換寿命については国の規定もなく、電力各社でまちまちでした。メーカーは、今回ひびが見つかった制御棒の二倍をこえる中性子照射量を交換の目安として推奨していました。制御棒の外観点検の実施も一部にとどまっていました。

 ひびが見つかった制御棒のうち四十五本は使用済み制御棒です。交換された後も、改めて調査するまでひびに気づかなかったという、お粗末な管理が浮き彫りになりました。

 ひびの主要な原因とされる照射誘起応力腐食割れによって、過去にも別のタイプの制御棒が変形し正常に動作しなくなる事故も発生しています。しかし、国や電力会社は十分な対策をとっていませんでした。

 今回の事態は、ステンレス鋼やハフニウムなど炉内構造物の材料が中性子を浴びることでどう劣化するのかを、正確に把握できていないことを示しています。(中村秀生)


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