2006年5月29日(月)「しんぶん赤旗」

ゆうPress

たたかいは誇りに

不当解雇に「納得できない」25歳、青年ユニオンに加入。

会社と交渉、権利認めさせた


 頑張って働いたのに解雇される――。そんな青年雇用の実態があります。フリーターや正社員など約250人が加盟する個人加盟型の組合「首都圏青年ユニオン」には、さまざまな相談が寄せられています。1月に不当解雇を通告された青年の4カ月間を追いました。(本田祐典)


 「おれ、クビって言われちまった」。東京・新宿区の居酒屋で語り合う青年――。ビールを飲みながら、タカシさん(25)は友人に打ち明けました。「おれは頑張ってたよ。納得できない。悔しいよ」

 社長に呼び出され、解雇が告げられたのは一月のこと。「君には、この仕事は向いていないな。三月に辞めてほしい」

 昨年十一月に正社員として就職したばかりでした。都内の出版関係会社で、本の編集を担当。仕事を覚えるために昼休みも勉強し、やっと仕事に慣れ始めていました。

 事情を聞いた友人が言いました。「個人でも加盟できる労働組合がある。首都圏青年ユニオンに相談したらどうだ?」。タカシさんはメールを送りました。

 「向いてないからというだけで正当な解雇の事由になるのでしょうか。このまま何もしなければ、何の保障もないまま放り出されてしまいます」

 ユニオンに加入したタカシさん。三月初め、解雇の撤回を求める団体交渉を会社側に申し入れました。

 当時のことを聞くと「どきどきした」と振り返ります。交渉を申し入れた後、出勤すると社長が言いました。「親の顔が見てみたい」。それでも、きぜんとした態度で挑みました。支えはユニオンの仲間たち。「みんな、おれよりも怒っていて、こういう人たちがいるんだなって」

職場を変えたい

 団体交渉や、東京都労働委員会への申し立てを経て、三月末に和解が成立。解雇撤回には至りませんでしたが、会社側に権利を認めさせて和解金を勝ち取りました。

 「ユニオンと出合う前は、たたかうのが不安だった」と打ち明けます。友人の中には「時間がかかるよ。負担が大きすぎる」と、タカシさんを思いやってあきらめるように勧める人もいました。

 それでもたたかったのはなぜか――。実は会社で困っていたのはタカシさんだけではありません。社員のほとんどが二、三年で辞めていきます。「仕事ができなければ、すぐクビというプレッシャーがあった。みんな苦しんでいた」。タカシさんの表情が険しくなりました。

 「マジで職場を変えたかった。おれが辞めた後も、みんながつらい思いを続けるのが嫌だった」と、照れくさそうに教えてくれました。

 会社の同僚はタカシさんに手紙を送りました。「お疲れさま。よく頑張ったし、我慢したね」。尊敬の気持ちがつづられていました。「泣きはしなかったけど、読んだらグッときて…。うれしかった」

 これまで「社会を変えるための集団行動とか、ダサい」と思っていました。いまは、たたかったことが誇りです。「声をあげるのはかっこいいよね。おれがやったことは精いっぱいのかっこつけ」

ああ、働きたい

 四月、タカシさんが編集した本が書店に並びました。「働いて良かった」。最後のページを開き、自分の名前をじっと見つめていました。

 いまは就職活動中です。この日は、東京・港区の学生職業支援センターに。パソコンで求人情報を探していました。ふと、こちらを向いてつぶやきました。「ああ、はやくまた働きたい」


企業には人育てる責任

一緒に交渉した首都圏青年ユニオンの河添誠副執行委員長の話

 能力がないと言って、企業が一方的に解雇するのは不当です。自分を責める人もいるかもしれませんが、それはその人のせいではありません。不誠実な企業のもとで、多くの若者が同じように苦しんでいます。個人の問題ではないのです。

 そもそも「向いていない」というのは、解雇の理由になりません。企業が人を雇えば、仕事を担えるように育てる責任があります。ところが、多くの企業が、即戦力を求めて労働者を短期的に評価し、まともな教育もせずに安易な解雇をしています。

 タカシさんの場合は不当解雇のほかに、残業代の不払いもありました。会社側は、月2万円以上の残業代は払わないという勝手なきまりをつくり、違法なただ働きを強いていました。

 団体交渉の場で会社側は、タカシさんに対し「ほかの仕事を探した方が君のためだから(解雇した)」とまで発言しました。あまりに不誠実な態度です。残業代を払わなければならないという認識もありませんでした。

 企業の違法行為、不正がまん延し、横行しています。青年の労働実態は残酷で、深刻です。こんなとき、社会の不正義を告発し追及するのは、困っている当事者だけの役割ではありません。困っている人も、困っていない人も、ぜひ組合に加入してほしいと思います。


お悩みHunter

もうすぐ正規職員にでも研究者の夢も…

  大学を卒業し就職して二年目。三年間で契約が切れる契約社員です。契約後、正規職員として職場を紹介してくれるのですが、研究者になりたいという夢もあります。進みたい大学と研究目的ははっきりしていますが、仕事を辞めたら収入が安定しません。学費や生活費、将来の保障を考えると決断できません。(26歳、男性。神奈川県)

仕事続けつつ考えてみては

  あなたは研究者になりたいのですね。おそらく研究者への道は、今の仕事を続けるよりも経済面でも将来の保障などにおいても困難で不安なことが多いでしょう。けれども、自分の好きなことをやっているときの人間の集中力はすごいものがあります。次々にぶつかってくる困難や不安に立ち向かっていけるだけの力を持っています。

 あなたは今の仕事にもやりがいと責任を持っていますね。進学するなら、お金が必要になりますから、しばらく今の仕事を続けてはどうでしょうか。その間に、進学のこともじっくりと考えることができると思います。

 途中で退職することへの後ろめたい気持ちもわかります。しかし、別の仕事を探したとしても、辞めるときは、やっぱり同じ気持ちになると思います。職場の人に自分の将来の考えをしっかりと伝えることが信頼関係を築くことだと思います。どのような道を選んだとしても、あなたなら立派にやっていけると思います。しかし、その道でよかったかどうかは誰にもわかりません。

 私自身、チャンピオンになっても「もしボクシングをやっていなかったら、もっといろいろなことができただろうなあ」と考えることがあります。でもそれ以上に「ボクシングをやっていてよかった」と思っています。まずは自分を信じてください。応援しています。


第41代日本ウエルター級チャンピオン 小林 秀一さん

 東京工業大学卒。家業の豆腐屋を継ぎながらボクシングでプロデビュー。99年新人王。03年第41代日本ウエルター級チャンピオン。


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