2006年5月24日(水)「しんぶん赤旗」

談合へ“汗かきルール”

“設計コンサル協力度”で受注

恐喝事件も発生

汚泥処理 建設疑惑


 し尿・汚泥処理施設をめぐる談合事件は、東京高検に限られていた独禁法違反罪での起訴を全国の地検でも可能にした改正独禁法を初めて適用しての捜査となりました。今後、東京、名古屋などの地検も捜査に着手するとみられますが、談合によって価格をつりあげ、税金を無駄遣いした構造的な問題に徹底的なメスを入れることが求められています。(藤沢忠明)


 今回、公正取引委員会が「談合を繰り返していた」として告発したのは、荏原製作所、クボタなど十一社です。

 本紙が入手した設計コンサルタント「日本環境衛生センター」(日環センター、川崎市)の資料によると、二〇〇〇年度から〇四年度までの五年間に全国の自治体などが発注した、し尿・汚泥処理施設の87・1%を、この十一社のいずれかが受注していました。三十年ほど前に成立した「NS会」と呼ばれる談合組織のメンバーで、文字通り、談合仲間で独占的に受注していたことを示しています。

 こうしたなかで、告発対象八件の一つ、静岡県西伊豆町と松崎町の二町でつくる「西豆(さいず)衛生プラント組合」の場合、近隣の同県下田市と南伊豆町でつくる「南豆(なんず)衛生プラント組合」を低価格で応札した二社を排除して入札がおこなわれました。このため、「西豆」と「南豆」の処理量は大差ないのに、建設費が「西豆」の方が、約二億円高くなりました。

 同じく、告発対象となった三重県の「鳥羽志勢広域連合」では、恐喝事件まで生まれています。大阪の建設会社の役員が、同施設を落札した栗田工業の担当部長に対し、「談合があったんやろう。下請け業者を入れられないなら多少は何とかしてよ」と口止め料を要求、約千六百四十四万円を振り込ませたという疑いです。

 一連の談合では、施設の設計を受注した設計コンサルタントに最も協力した企業を受注予定社とする「汗かきルール」と呼ばれるシステムが確立していたことが判明しています。多くの基本設計を手がけた「日環センター」は厚労、環境両省所管の財団法人で、現理事長は元厚生省、専務理事は元環境庁の天下りです。また、非常勤理事には、大手メーカー各社の荏原副社長、三菱重工業社長、クボタ社長、西原環境テクノロジー相談役が名前を連ねています。官民癒着そのものです。


 公正取引委員会が告発した11社 クボタ(大阪市)、アタカ工業(同)、栗田工業(東京都新宿区)、荏原(大田区)、住友重機械工業(品川区)=以上、談合組織の幹事会社。ほかにJFEエンジニアリング(千代田区)、西原環境テクノロジー(港区)、三菱重工業(同)、日立造船(大阪市)、三井造船(東京都中央区)、タクマ(兵庫県尼崎市)。

 逮捕されたメーカー幹部7人 し尿・汚泥処理施設の入札をめぐる談合事件で逮捕されたのは▽クボタ(大阪市)環境リサイクル営業部付部長寺川憲一(59)▽アタカ工業(同)環境プラント事業本部営業企画部長梅田四郎(55)▽栗田工業(新宿区)環境事業部営業第二部専門部長辻忠義(52)▽荏原(大田区)環境プラント事業本部営業統括部参事長谷川雅則(56)▽JFEエンジニアリング(千代田区)水処理第二営業部第二営業室長臼田信一(49)▽西原環境テクノロジー(港区)環境事業部担当部長丹野都夫(55)▽日立造船(大阪市)水・汚泥営業部担当部長中村文威(57)の各容疑者。

表

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