2006年5月21日(日)「しんぶん赤旗」

ここが知りたい特集

成果主義賃金 Q&A


 仕事の「成果」で賃金を決めるという成果主義賃金が職場に広がってほぼ十年になります。うたい文句と違って賃金はあがらず、限界のない長時間労働、健康破壊、労働災害の増加など問題だらけの制度だということが明らかになってきました。いったい成果主義賃金とは何なのか、改めて考えてみましょう。


賃金上がると聞いたが?

  年齢や勤続年数に関係なく仕事の「成果」で賃金をあげる制度だと聞いて、がんばって働いたが、思ったように上がらなかった。むしろ下がった人が多いのですが……。

労働者の8割 賃下げも

  ひどいところでは八割の労働者が賃下げになったという事例もあります。最初のころは一時金が対象でしたが、いまでは本給そのものが下げられるので生活への影響は深刻です。

 成果主義賃金を導入している企業は67・1%といわれます(産業能率大学、〇五年調べ)。導入するもともとの動機は、長く勤めることによって賃金が上がっていくこれまでの年功賃金体系が高コスト体質を招いているとしてこれを改め、人件費を削減することにありました。人件費の総額は抑えられているので、賃金は、ごく一部の人が上がることはあっても、多数は「並」か下がってしまいます。

 「成果をあげれば賃金があがる」といえば、なんとなく公平そうです。問題は「成果」をどうはかるかです。多くの場合、上司と話し合って目標を設定し、どれだけ達成したかを五段階で採点するかたちをとります。

 しかし、チームで一体となって仕事をする研究開発部門とか、同じような仕事をする総務部門など、いまの職場は個人ごとに「成果」をはかるなんて無理な話です。仮に全員が目標を達成しても、人件費のワクが決まっているので、上司は採点に差をつけなければなりません。結局、好き嫌いとか忠誠度とか、仕事の「成果」と関係ないところでランク付けすることになりがちです。

 このため目標を達成しても低ランクに落とされ賃金が下がることになります。成果主義賃金は、はかりようのない個人の「成果」を無理やりはかって差をつけて、賃金を下げるシステムにほかならないということです。

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30代で頭打ち

 これまで日本の賃金制度の多くは、若い頃は賃金が低く年齢・勤続を重ねていくことで賃金が上昇していく年功型賃金制度が主流でした。もちろん、会社の査定によって賃金差が生じる能力(成果)給部分はありましたが、賃金が下がることはありませんでした。労働者の経験や習熟度を前提に、毎年積み上げていく評価方式だったからです。

 これに対して、成果主義賃金制度は、その多くが三十―三十五歳程度で頭打ちになります。会社から高い査定をもらって昇格・昇進できなければ、賃金は上がらないしくみになっています。年功部分をなくし、評価を積み上げずに毎年の「洗いかえ方式」をとっているためです。その年に高い査定を得て少し賃金が上がっても、翌年はゼロに戻して再評価します。そのため、賃金は上がりにくく、下がりやすい制度といえます。

 若年層の初任給水準が低い年功型そのままに、賃金上昇分を始めの十年弱だけ増やしても、生涯賃金でみれば大幅な低下になります。

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健康害する人増えたが?

  成果主義賃金になってから、協力しあって仕事をする空気がなくなって人間関係がこわれてきた。ストレスがたまって健康を害する人が増えてきたのですが……。

競争、競争で関係悪化

  成果主義は、労働者本人と上司の面接で目標を決め成果を評価するという、個別管理を基本にした働き方です。したがって労働者間の結びつきが弱くなるという特徴があります。並みの成果では高い評価がもらえないので、同僚はライバルになります。人間関係がぎすぎすしたものになっていくのは当然です。

 実際、労働組合にたいするメンタルヘルスの取り組み調査で、職場のメンタルヘルスを低下させる要因で最も影響が大きいものとして「コミュニケーションの希薄化」が突出して多く49・9%という数字もあります(社会経済生産性本部メンタルヘルス研究所、〇五年七月十五日)。

 労働者は高い目標を押し付けられて仕事の量が増えるので、ますます長時間労働になって疲労を蓄積させています。同僚との成果の競い合いがそれに重なって体と心がすさまじい勢いで破壊されています。「長期に休んでいる労働者が三十代に広がっている」「生産性をあげろと号令がかけられ、マネージャークラスがうつ病にかかっている」「心の病が増え自殺者が後を絶たない」。こういう状態が広範に広がって一刻も放置できない大問題になっています。企業の責任が問われています。

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手当なし残業どうして?

  期限までに目標を達成するために長時間働かざるをえない。裁量労働制と一体で成果主義が導入されているので、残業手当も出ないのですが……。

裁量制で“残業なし”

  成果主義賃金は、何時間働いたかに関係なく、あくまでも成果で賃金を決める制度です。期限内に成果をだすためにはどうしても残業になります。しかし残業をいっぱいしたからといって、手当てを請求しようものなら「働き方が悪い」といって評価をさげることになってしまいます。高い評価をもらうためには、同僚が夜十一時まで働くなら自分は十二時までがんばり、なおかつ残業手当は請求しないという、終わりのない長時間労働に自分を追い込まざるをえません。

 成果主義賃金は、裁量労働制と一体で導入されている職場でとくに深刻です。裁量労働制は、仕事を労働者本人の「裁量」にまかせるというたてまえの働き方で、何時間働いても事前に「労使協定」で決められた時間だけ働いたとみなす制度です。「労使協定」が八時間であれば、実際は残業しているのに八時間しか働いていないということになります。残業という概念がなくなるのです。企業にとっては、割増しとなる残業手当を出さずに何時間でも働かせることができる制度です。

 情報処理システムの分析・設計など職種を限定した専門業務型(一九八七年、労働基準法改悪)と、専門職以外のホワイトカラー層に広げた企画業務型(九八年同)の二種類あります。とくに企画業務型について二〇〇三年の法改悪で導入しやすくなったため、これとセットでホワイトカラー層への成果主義賃金の導入が広がりました。

 人間らしい働き方の土台である労働時間が完全に無視され、残業概念もなくなることによって、労働者は成果をだすために果てしない長時間労働を強いられることになってしまいました。

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5割が12時間超

 裁量労働制は、実際に働いた労働時間ではなく、あらかじめ労使がきめた「みなし時間」を働いた時間とします。その差はどれくらいあるのでしょうか。

 企画業務型の場合、みなし時間を1日「8時間以下」としている事業場は7割近くあります。実際の労働時間(平均値)は8時間以下が18.1%と2割もありません。

 最長では、12時間を超える人が49.9%と5割をしめます。これは、月残業時間に換算すると、過労死の危険が高まる80時間を超える長時間労働です。月200時間超の残業に相当する1日18時間超の労働時間の人は、5.2%でした。大規模事業場ほど増え、301人以上では12時間超が60.8%と6割を超え、18時間超は7.4%います。

 IT技術者などが対象の専門業務型では、みなし時間が8時間以下は45.7%ですが、実際の労働時間も8時間以下は21.5%にすぎません。

 最長では、1日12時間を超える人が52.5%と過半数に達し、18時間超は9.1%と約1割もいます。301人以上の事業場では12時間超の人が65.1%と7割弱、18時間超は17.8%と2割近くに達しています。


公務職場になじむのか?

  成果主義が公務員や教員にも広がっている。協力して住民や子どもと向き合うことが最も求められる職場に合っているとは思えないのですが……。

市民生活の切り捨てに

  個人の成果を格付けして「差」をつける成果主義は、公務員や教員に最もふさわしくない制度です。その害悪はすでにいたるところで発生しています。

 自治体の職場では「人事考課は、保育所の民営化や福祉関係の切り捨てなど、市民生活に直結する分野のリストラを推進すればするほど高い評価になる」という事例があります。

 教員も深刻です。たとえば「自己管理目標制度」という成果主義が導入されている学校で「目標設定、自己点検、上司への報告などに時間をとられ、子どもに向き合うことが困難になってきている」「目標が、子どもでなく上司に向きがちとなり、教員間の共同意識は細くなり競争が強まっていく」などの弊害が出ています。

 住民に奉仕することを使命とする自治体職場とか、子どもの人格形成に責任を負う教育現場は、何よりも創意性と集団の力の発揮が求められています。「五段階評価」で競わせるような人事管理制度は、それに逆行するものです。

 各地の自治体や学校で批判や反対の声がおこり、導入を見送ったとか、手直しする運動が広がっています。


「いま職場は」 キャンペーン

 本紙では、深刻化する成果主義賃金による状態悪化や、非正規雇用への置き換えによる使い捨て労働を職場から告発、打開するキャンペーンにとりくみます。ご期待ください。(職場取材チーム)


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