2006年5月18日(木)「しんぶん赤旗」

主張

医療改悪案採決

“命に格差”の強行許されない


 自民党、公明党が、医療制度改悪法案を衆院厚生労働委員会で強行採決しました。日本共産党をはじめ野党が、“審議は尽くされておらず、引き続き徹底審議を”と採決に反対しているのに、与党は数を頼んで押し切りました。こんな暴挙は許されません。

国民世論の無視だ

 小泉内閣の医療制度改悪案は、高齢者を中心に負担増を押し付け受診抑制するとともに、保険の使えない医療を拡大する「混合診療」の本格的導入を盛り込んでいます。日本医師会や看護協会をはじめ、全国の医療団体がとりくんだ、負担増や混合診療に反対し国民皆保険制度の堅持を求める署名は、昨年暮れ一カ月余で千七百万人分が集まっています。採決の強行は、改悪に反対する国民世論を無視する態度です。

 不十分な審議を通じても、法案が国民から医療を奪う大改悪であることが明らかになっています。

 長期療養者を対象とする療養病床の大幅な削減は、高齢者の病院からの追い出しを大規模にすすめ、行き場のない高齢者を多数生み出しかねません。

 政府は、「医療の必要が低い社会的入院」の患者を退院させるのだといいますが、これらの患者の多くは病状の変化に対応した医療を必要としています。社会の変化で、急速に独居老人や老老世帯が増えており、虚弱高齢者を受け入れる基盤が縮小しています。与党の質問でも「関係者から不安の声があがっている」と出されていたではありませんか。

 〇八年四月から導入される「高齢者医療制度」は、現在家族に扶養され、保険料がかからない高齢者を含め、七十五歳以上のすべてを対象に、年間平均六万円の保険料を徴収します。介護保険料をあわせると月額一万円を超える額が年金から「天引き」されます。

 政府は、あまりにも低い年金(年間十八万円未満など)の人からは天引きしないといいます。しかし、保険料の滞納者には、新たに保険証を取り上げる「資格証明書」を発行することにしています。窓口でいったん医療費を全額支払わなければなりません。国保料の滞納が増加し、保険証を取り上げられたために医療を受けられず命を落とすという悲惨な事態が生まれています。無慈悲な保険証とりあげをやめさせることが必要なのに、新たに持ち込むなど絶対に許されません。

 高額の医療費を請求される混合診療をめぐって、川崎二郎厚生労働相が、「実質的な解禁」(五月十二日)と明言したことは重大です。保険外診療と保険診療の併用を認める混合診療は、「必要な医療はすべて保険で行う」という公的保険の原則を崩します。保険外診療は、地域によっても病院によっても大きな格差が生まれます。

 混合診療が解禁されれば、新しい医療技術や新薬の利用、手厚い治療などの保険外診療に格差が持ち込まれます。所得の格差が命の格差に直結するような社会にしていいのか―。そのことが問われているのです。

政治ゆがめる日米財界

 小泉首相は、混合診療の導入が国民の要請であるかのように答弁しています。しかし、背景には、自分たちの保険料負担を軽減させたいという日本の大企業・財界と、日本の医療を新たなもうけ口にしようとねらっているアメリカの保険会社・医療業界の強い要求があります。

 国民に法案の全容を明らかにしないまま、強行は許されません。


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