2006年5月15日(月)「しんぶん赤旗」

世界女性スポーツ会議終わる

熊本協働宣言を採択


 女性のスポーツに対する諸問題を話し合った第4回世界女性スポーツ会議が14日、熊本市内で閉会しました。約100の国と地域から700人が参加し、過去最高の規模となりました。


 全体会では、スポーツを通じて男女共同参画社会の実現をめざし、諸団体が密接に力をあわせて積極的に行動していくことを確認した「熊本協働宣言」を採択。宣言をより実効的なものにしていくうえで、4日間の議論を踏まえ、女性のスポーツ参加をあらゆる分野で促進するために、一人ひとりが行動を起こそうと呼びかけました。そして、2010年に第5回世界女性スポーツ会議を開催するオーストラリアに、会議旗が手渡されました。

 スーダンから参加した女性スポーツ団体のレイラ・カーリーさん(40)は、「自分の英語力が不十分なので難しかったが、ここで見たり、聞いたりしたことを帰って自国の人々に必ず知らせたい」と抱負を語りました。

 日本ハンドボール協会の女性委員会で委員を務める堀美和子さん(36)は「刺激になりました。一人ひとりができることをやり、それぞれの異なる力を合わせていくことが大事だと感じました。質疑応答も活発で、みなさんの『現状を変えていこう』という強い気持ちを感じました」と語りました。


性差別をなくしてこそ

他団体と連携

 会議では、世界各国の現状や変化などが報告され、参加者からは、地道な活動に感嘆の声が上がり、何度となく共感の拍手がわきおこりました。

 注目を集めたのは、英国女性スポーツ連盟の初代議長を務めたセリア・ブラッケンリッジさんのセクシュアルハラスメント(性的嫌がらせ)に関する報告でした。

 ブラッケンリッジさんは20年前、英国内で女性とスポーツにおける差別について調査を始めました。「暴力や性的虐待がありましたが、当時は認識されていませんでした。公表すると、私はうそつきといわれ、スポーツ機関から役職をとかれました」。そしてスポーツ界以外の児童保護を目的とした団体や、臨床心理学者が性犯罪者を研究する団体などと連携し、運動を展開。1995年に水泳の指導者が20年間セクハラをしていたことがわかり禁固刑になってから、スポーツ界でも大きな変化がうまれました。

 現在は、児童保護団体が、スポーツ専門の部署をつくり6人からなる事務局を置いています。スポーツクラブは、子どもの保護をしなければ政府の補助が受けられないなど前進してきました。

 参加者からは「被害者にも責任があるという雰囲気がある」(メキシコ)「被害を訴えると逆に訴えられたら困ると告発できない選手も多い」(米国)などの声が次々とあがりました。

 ブラッケンリッジさんは「差別のある社会で、差別のないスポーツはできない」と語り、「スポーツ以外の人とも手を組んで、強い組織を構築して、運動をすすめてほしい」と強調しました。

遅れてる日本

 また、「スポーツにおけるリーダーシップ」の分科会では、国際比較体育スポーツ学会役員のローザ・ロペス・デ・ダミコさん(ベネズエラ)が、女性スポーツに対する実態や意識調査の結果を報告しました。

 調査は、昨年から始まり、政府組織「IDN」に登録しているスポーツ連盟が対象で、回答を寄せた38連盟を分析しました。この調査で、会長や副会長などトップ5の要職を女性が21%占めていることが分かりました。また、国内オリンピック委員会(NOC)ではトップ5の8人中3人が女性だといいます。

 ダミコさんは「まだ不十分です。女性は家族を優先すべき、女性がスポーツに関心をもつのは伝統ではないという考えも多くある」といいます。

 日本は、アテネ五輪で、女性選手数が男性を上回りました。しかし、日本オリンピック委員会(JOC)が2月に実施した各競技団体へのアンケートでは、女性指導者は約15%、女性役員に至っては6・7%にとどまっていることがわかりました。

 今回の会議でも、裏方、ボランティアなどで多くの日本人が参加した一方、基調報告、分科会で報告者の活躍はあまりみられず、寂しいものがありました。

 先日、熊本県体育協会と熊本市体育協会は、スポーツにおける男女の平等などをうたうブライトン宣言に署名しました。この会議を準備する課程で、変化が起きつつあることは確かです。

 同時に、女性スポーツ界が本当の意味で開花することができるかは、これからが正念場といえます。(栗原千鶴)


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