2006年5月15日(月)「しんぶん赤旗」

ASEAN 初の国防相会議

設立から39年 平和的解決路線深め

ミャンマー欠席 新たな壁も


 マレーシアの首都クアラルンプールで九日、東南アジア諸国連合(ASEAN)の国防相会議が開かれました。一九六七年の設立から三十九年たっての初開催です。

 ASEAN設立前の六〇年代、マレーシア、インドネシア、フィリピンの原加盟三カ国は、領土問題で地域紛争を起こしていました。設立後も相互不信は続き、国防相会議を開く条件はありませんでした。

信頼醸成を進めて

 相互の努力により、年月とともに信頼醸成が進み、マレーシアとインドネシアは国際司法裁判所の判決による領土問題解決という実績を残しました。

 ASEAN首脳は二〇〇三年十月、「第二ASEAN協和宣言」に署名、二〇二〇年までに(1)安保(2)経済(3)社会・文化の共同体をめざすことを宣言。経済面に加えて安保分野での協力を前面に出しました。

 翌〇四年十一月、ラオスでの首脳会議で、ASEAN共同体の実現に向けた「行動計画」が決まりました。

 「行動計画」原案には「民主的選挙の定期的な実施」、「平和維持部隊の創設」という文言が盛り込まれていました。これには「内政干渉」との批判が出て、削除されました。

 しかし「安保共同体」の目的として、「民主主義の達成」が明記されました。民主主義や紛争予防・解決機能の確立を目指しました。紛争解決のための具体的措置としては、「平和維持センターの活用」が書き込まれました。

 国防相会議の開催は、昨年七月の第三十八回年次閣僚会議(外相会議)で同意されました。「ASEAN安保共同体」へ向けた話し合いを進めるためのものです。

 今回の国防相会議の共同声明では、「対話と協力を通じての地域の平和と安定の促進」をうたい、昨年の合意を一歩進めました。

 初の国防相会議開催は、ASEANが追求してきた「紛争の平和的解決」の路線が深まった結果でもあります。

内政不干渉崩さず

 しかし、新たな問題も発生しました。ミャンマーが国防相会議を欠席したことです。

 軍事政権のミャンマー政府にとっては、「民主主義の達成」は「民主的な選挙の定期的な実施」と同義語で、「平和維持センターの活用」は「軍事的圧力」とみえなくもありません。

 ASEANはミャンマーに対して、民主化運動指導者アウン・サン・スー・チーさんの自宅軟禁解除や、民政復帰へ向けた憲法制定の具体的日程を示すよう、繰り返し求めています。

 四月にも非公式な外相会議を開催し再度、要求しましたが、ミャンマー側は何ら具体的な言及はしませんでした。完全なこう着状態です。

 ミャンマー問題という大きな壁の出現に、マレーシアのナジブ国防相は、会議後の記者会見でこう述べました。

 「私たちが快適と思うペースと、全会一致を基礎としたASEANの決定方式とともに私たちは進んでいく」

 内政不干渉の大原則は崩さない、という決意の表れです。その意味は決して小さくありません。

 (ニューデリー=豊田栄光)


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