2006年5月15日(月)「しんぶん赤旗」

金融商品取引法案

消費者保護の視点が欠落


 金融商品の取引に対し、証券取引法などを含む横断的な法律として金融商品取引法案が今国会で審議されています。十二日に衆院財務金融委員会で可決(日本共産党は反対)されましたが、金融被害者などからは同法案について「消費者保護の視点が欠落している」と批判の声があがっています。

被害が広がる

 「貯蓄から投資へ」と政府がすすめてきた金融の規制緩和によって、個人でも金融先物や外国為替をくみこんだ、損をする可能性が高いさまざまな金融商品を購入できるようになりました。なじみのない金融商品を「定期預金よりも利率が高い」「もうかります」と業者から勧誘され、高齢者などが生活資金を失う被害があとをたちません。政府が規制緩和ばかりをすすめる一方、金融消費者への保護はなおざりにしてきたからです。

 現在、国会で審議されている金融商品取引法案は、金融商品の規制のすきまをぬう被害が多発していることから、その「すきまを埋める」ことをひとつの目的として、証券取引法などをひとまとめにする包括的な法をつくろうとするものです。

 ライブドア事件をうけて、利益をつけかえる手口に利用された投資ファンドを規制したり、法令違反にたいする罰則を強化するなどの面もあります。

 しかし、一般の金融商品の購入者への保護では、法の対象に商品先物取引や海外商品先物取引、海外商品先物オプション取引などの「商品デリバティブ」(金融派生商品)が含まれず、さまざまな問題を起こしている銀行融資や生命保険も対象となっていません。

 途中解約ができないのに銀行の都合で期間が延長でき、解約すると元本を割ってしまう「特約付定期預金」など、一見、リスク商品だとはわからないものも販売されており、包括的な法規制が求められています。

適用範囲限る

 金融被害の実態としては、まず電話などでの勧誘が発端になるケースが多く、そこでは消費者の知識や経験、財産などは確かめられずに金融商品がすすめられています。

 こうしたことから、金融商品の被害者団体や弁護士などは、被害をなくすために「不招請勧誘」(望まない人への勧誘)の禁止と「適合性の原則」(知識、経験、負担能力に合わず、目的に反する勧誘の禁止)を求めてきました。イギリスでは、金融ビッグバンとともに、こうした金融消費者への保護法制がつくられています。

 今回の法案では、「適合性の原則」と電話、訪問による「不招請勧誘」の禁止の適用範囲が、投資性の高い金融商品だけに限定されています。

 「不招請勧誘」の禁止は、「政令で定める」となっており、金融庁がこれから指定するといっているのは、取引所を通さない店頭での外国為替証拠金取引だけで、現状より後退しています。「不招請勧誘」は原則禁止が必要です。

 金融商品を包括的・横断的に規制する金融消費者保護のための法制こそが求められています。(吉川方人)


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