2006年5月13日(土)「しんぶん赤旗」

主張

中央青山業務停止

財務の偽装を許さない市場に


 金融庁が中央青山監査法人の一部業務を停止する処分を発表しました。所属の会計士がカネボウの経営陣と共謀し、巨額の粉飾決算に長年にわたって加担していたためです。

 中央青山には会計士の監査結果を点検する制度もありましたが、まともに機能していませんでした。

 中央青山は日本の四大監査法人の一つで、ソニー、トヨタ、新日鉄など名だたる大企業を含む五千五百社を監査しています。このうち、今回の処分では二千社以上の監査に影響が及びます。

底知れない腐敗の象徴

 今回の事件だけではありません。西武鉄道グループやライブドアの事件など会計監査への信頼を根底からゆるがす大事件が相次いでいます。

 企業の財務情報は証券市場の土台であり、証券市場の本来の役割は企業活動に必要な資金を調達することにあります。このような、証券市場と、その土台をなす情報開示のあり方は企業社会の健全性の反映であると同時に、企業社会に一定の規律を要請する側面も持っています。

 一連の財務情報の偽装がどれほど深刻な事態なのか、政府、関係者ははっきりと認識すべきです。

 とりわけ公認会計士は企業の財務情報を専門的な立場で分析し、公正と認定すればお墨付きを与える重要な役割を担っています。財務情報の最終関門として、資本市場の「ゲートキーパー」(門番)と呼ばれるほどです。その会計士が粉飾に協力していたこと、事件が会計監査の仕事の九割近くを占有する四大監査法人の一角で起きたことは、底知れない腐敗の深さを示しています。

 小泉内閣は「貯蓄から投資へ」を合言葉にして、国民の資金を預貯金から証券市場に流すため、規制緩和や税制の優遇措置を相次いで導入してきました。資金を調達する側の企業にとってはやりたい放題の自由が一気に与えられる一方で、公正な市場を保障する規制や監視の体制はきわめて緩いままです。

 まさに「ジャングル資本主義の横行」(証券市場や会社法に詳しい上村達男早稲田大学教授)です。

 アメリカでも二〇〇一年に大手エネルギー会社のエンロンが、大手会計事務所と癒着して粉飾決算事件を起こしました。これを受けてアメリカは企業改革法を施行し、市場規制と罰則を広範に強化しています。

 例えば米国は企業と会計事務所の癒着を防ぐため、担当者が同一の企業を監査できる期間を最長「五年」に制限しました。これに対して日本では〇三年に公認会計士法を改定、業界の自主基準と同じ「七年」にとどめました。

 当初は米国同様に五年にするはずでしたが、七年に抑えるよう業界側が自民党に「猛烈に働きかけた」(金融専門紙)結果です。

総合的な規制と監視を

 これらの制度見直しは急務です。

 しかし、監視体制を強化するだけで日本の証券市場が公正さを確保できるとは思えません。上場会社一社当たりの会計士数はアメリカ六十三人、イギリス六十人に対して日本はわずか四人です。さまざまな点で市場を支える基盤が弱すぎます。

 監査法人が企業から報酬をもらう関係になっていることも問題です。米国の場合は経営者から独立性のある委員会が監査契約を承認する仕組みを取っています。

 金融行政の規制緩和一辺倒を改め、事前規制も含めた総合的な規制と監視の体制に転換することで、財務の偽装を許さない市場をめざすことが求められています。


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