2006年5月10日(水)「しんぶん赤旗」

世界に胸張れる憲法

「九条の会」講演に3500人

教育基本法改悪に懸念 大江・加藤・澤地氏に共感

埼玉


 憲法九条を輝かそうと活動する「九条の会」の埼玉講演会が九日夜、さいたま市の大宮ソニックシティで開かれ、会場の大ホールと小ホールを三千五百人が埋め尽くしました。会場には、開演の五時間前から参加者が並び、国内外のマスメディア十数社も取材するなど注目を集めました。


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(写真)会場をうめて3氏の話を聞く人たち=9日、さいたま市

 参加申し込みは、一カ月前に満杯状態。同日は、呼びかけ人で、作家の大江健三郎さん、評論家の加藤周一さん、作家の澤地久枝さんの三氏が講演しました。

 大江氏は、憲法、教育基本法に共通して書き込まれている「希求」(願い求めること)という言葉の意味にふれながら、教育基本法が改定されることになれば、「戦後の苦しい状況のなかで、なんとか誇りにたる教育をつくろうとした憂い顔のまじめなおとなたちの希求はついにうちくずされ、改憲への道も一挙に開かれる」と警告しました。

 加藤さんは、「現実を理想の方に近づける努力をしながら、憲法九条を守る方角へ現実を動かすとはっきり示せれば、国際社会にも受け入れられる」とのべました。

 澤地さんは、侵略戦争をした日本の「あの戦後の焦土の中から生まれた、私たちがたった一つ世界に胸を張れるものが、憲法です」と訴え。「戦前は人が人間らしい暮らしをとりあげられて死んでいった。憲法は、そういうものから解き放った」と語りかけました。

 「自分の耳で聞いて自分の考えを持ちたい」とはじめて「九条の会」講演会に参加した男性(24)=東京都中野区=は、「『希求』という言葉にこめた思いは、この言葉でないと伝わらないものがあるという話が面白かった。戦前の体験を聞いて、『九条を改正しない』という決意がこういう考えに基づいているのかと実感が伴っていて説得力があった。『改正した方がいいよ』という友達に、生で聞いた話としてしゃべりたい」と語りました。


予想以上に大きな前進

3氏が会見

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(写真)会見する(左から)大江健三郎、加藤周一、澤地久枝の各氏=9日、さいたま市

 大江健三郎、加藤周一、澤地久枝の各氏は、講演に先立って記者会見し、四千七百七十となった地域・分野別の「九条の会」の広がりについて、「予想以上に大きな前進で希望がある」(加藤氏)などと感想をのべました。

 大江氏は、「四千五百以上の自立的な運動の線が引かれ、黒々とした萃点(すいてん=運動や声が集まるところ)がみえてきた。そこから運動が始まる」とのべました。

 澤地氏は、「マスコミの報道を超えた人と人のつながりがつくられている。希望をもってやっていきたい」と発言。加藤氏は「憲法改正は手続き上も内容上も問題があると思って九条の会を始めた。憲法は永遠に変えられないわけではないが、根本原則を補強する改正と根本原則を変えることとは違う」と強調しました。


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