2006年5月7日(日)「しんぶん赤旗」

宇宙を軍事利用

自民、新法に着手

平和限定の国会決議無力化へ

財界が要求


 自民党の宇宙開発特別委員会(小野晋也委員長)は、「宇宙基本法」(仮称)を議員立法で成立させることを決め、法案化に向けて連休明けから本格的な作業を始めます。新法は、宇宙開発を平和目的に限定してきた国会決議の無力化がねらいで、軍事利用に道を開くものです。三菱重工などの宇宙・軍事産業の強い要望や、それを受けた日本経団連の系統的な財界戦略が裏にあることがわかりました。(松橋隆司)

 同特別委員会は今年初め、国会決議見直しの小委員会(河村建夫委員長・元文部科学相)を設置し、三月末までに議論をまとめました。

 政府はこれまで、宇宙開発の「平和利用」とは「非軍事」であると国会で答弁してきました。それを同小委員会は、国際的には「非侵略」で「防衛目的」の宇宙利用は可能と解釈されているとして、新法は「自衛権の範囲内」での軍事利用を認める方針です。

 また、国防を含めた国家戦略が必要として宇宙戦略会議を内閣に設置、宇宙開発を推進・総括する特命大臣を設けることを確認しました。

 新法が成立すれば「非軍事」で縛られていた自衛隊による衛星の打ち上げや、高性能の偵察衛星、弾道ミサイル探知の早期警戒衛星の保有に道を開くことになります。

 同小委員会は、現行国会決議の内容を根本から変えるには、議員立法しかないと判断。各省庁に立法化に関する報告を求め、八月までに法案をまとめ、公明党との与党協議を経て、国会へ提出する構えです。

 日本経団連は二〇〇四年七月、「今後の防衛力整備について」の提言で、「防衛目的での利用は、国際安全保障上、むしろ有用であるとの解釈がとられ、広く宇宙が有効利用されている」と強調。「わが国でも、早急に宇宙の国際的な解釈と整合させる必要がある」と要望しています。

 経団連の宇宙開発利用推進会議の会報『宇宙』では業界や学者のリポートを紹介し、国会決議見直しをキャンペーンしてきました。

 情報収集衛星の受注企業・三菱電機の担当部長は、米国や欧州が「非軍事」でなく、「非侵略」との立場をとっていると強調。国家の宇宙戦略を検討するには、政治的課題(平和利用原則)の解決に向けた議論を「是非とも開始頂きたい」(『宇宙』No.52=〇四年三月発行)と露骨に要望しています。


 宇宙の平和利用原則 一九六九年の宇宙開発事業団の設置に伴い、国会は同年五月、「わが国における宇宙の開発及び利用の基本に関する決議」を全会一致で行い、わが国の宇宙開発・利用の基本は「平和の目的」に限り、行うことを定めました。しかし八五年二月、政府は「利用が一般化している衛星」については、「自衛隊による利用が認められる」との統一見解をだしました。後に「一般化理論」といわれる見解で、情報収集衛星(軍事偵察衛星)の打ち上げ(〇三年)の拡大解釈に使われてきましたが、一般に使われていない軍事用高解像度の衛星などは制限されています。


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