2006年4月30日(日)「しんぶん赤旗」
違法株商法で多額の被害
家族にも言えず自分責める日々
「エイワン」80億円持ち逃げ
「この株はかならず値上がりします」「新規公開株を10%引きでお売りします」――。こんなうたい文句で、無登録の違法業者から未公開株や投資信託を持ちかけられ被害にあうケースが増えています。背景には、小泉内閣のすすめる「貯蓄から投資へ」の金融規制緩和で、急速に盛り上がっている株投資ブームがあります。十分な知識のない個人投資家を食いものにした被害は深刻な広がりを見せています。
株式売買の代行を口実に資金を集めていた貸金業者「エイワン・コミュニケーションズ」(東京都中央区)をめぐる被害の訴えが本紙に相次いで寄せられています。同社には、二十六日、埼玉県警が証券取引法違反と出資法違反の疑いで強制捜査に入りました。
エイワンは証券業の登録をしていないにもかかわらず、無許可で株の売買や運用をしていましたが、今年二月末、突然事務所を閉鎖。以後連絡がとれなくなりました。インターネットなどで全国一千人以上から八十億円以上を集めたとみられています。
虎の子の貯金
九州地方に住む村上恵子さん(41)=仮名=は、昨年六月以降、エイワンに約五千万円を預けました。株の雑誌に付いていたアンケートはがきを出したのがきっかけ。規模の小さい証券会社だと思い込んでいました。
子どもの学資のために、親から譲られた虎の子の貯金を運用したいと考えていた村上さん。
「手数料ゼロ。元金は保証され、半年後には11%を預託金利として支払う」という巧みな勧誘で、〇五年六月、一千万円を預けました。毎週「いち押し銘柄情報」などが郵送で届き、実際に買った株の配当が十万円、二十万円とつきました。
もうかっていると錯覚した村上さん。取引を重ねるごとに預ける金額も増えました。
ライブドア事件を機に不安を覚えた村上さんは、二月十日、解約、返金を申し入れました。ところが、何かと理由をつけて引き延ばされ、二月二十七日には電話も通じなくなったといいます。元金を持ち逃げされた疑いが濃厚です。
四月二十九日に取材で同社を訪れると、郵便受けの表札はそのままですが、荷物が運び出され、人影もありませんでした。
村上さんはいいます。
「だまされたほうが悪いのかと自分を責める毎日。家族にも言えずに、ストレスで身体もきつくなります。少しでも取り戻したい」
最初は確実に
顧客を信用させて預託金を集めるために、最初は値上がり確実な株を紹介するのも手口です。
長野県の岡田史子さん=仮名=も被害者の一人。三年前から友人に勧められインターネットでの株取引を始めました。
エイワンとの関係は昨年九月から。友人の紹介でした。
「確実に10%の利益を保証」という話に半信半疑でしたが、実際に大きな利益をあげているという友人の話を聞いて心が動きました。
エイワン側は、「株価が低い時にあらかじめ買ってある株を提供する」「預かった金で信用買いをするので、高配当が可能」という説明でした。
「株価があがっているなかで、株を持っていないと乗り遅れているような気になりました。銀行も金利がゼロなので、少しリスクがあっても分散投資と思っていました」
夫にも勧め、被害は合計約八百万円に。
「今から思えば、最初からお金を集めて持ち逃げするつもりだったのではないかと思います。絶対に許せません」

