2006年4月25日(火)「しんぶん赤旗」

認定こども園を考える (下)

保育がもうけの対象に


 政府はいま、なぜ「認定こども園」という新たな制度をつくろうとしているのでしょうか。

 「認定こども園」は、政府の「経済財政運営と構造改革に関する基本方針二〇〇三」(二〇〇三年六月)、「規制改革・民間開放推進三カ年計画」(二〇〇四年三月)に位置づけられたものです。財界のすすめる規制緩和、民間参入の大きな流れの一つとして、保育所への国や自治体の責任を縮小し、民間企業のもうけのための場にするという思惑が大きく働いています。

いっかんした財界の要求

 財界は、保育分野への企業参入と事業拡大を阻害しているのが、国と自治体が責任をもつ保育制度にあるとして民間開放、規制緩和を強力に要求してきました。

 日本経済団体連合会は、「保育サービス提供者の間の競争を阻害している要因を除去し、競争メカニズムを機能させることが不可欠」であるとして、「現在の認可保育所制度をゼロベースで見直し」「利用者が保育施設を自由に選択し契約を結ぶことのできる『直接契約方式』を導入すべきである」(二〇〇三年)などを主張してきました。

 政府は、三月末の閣議で、「認定こども園」での保護者と施設の「直接契約」、サービスに応じて施設が自由に設定する保育料の実施状況などをふまえ、認可保育所への導入を検討することを決めています。

 政府は、保育制度にたいする財界のこの要求を、「認定こども園」を足がかりに一気に進めようとしているのです。

 また、背景には、一九九〇年代後半以後、規制緩和を次々とすすめてきたにもかかわらず、「新規参入はあまりかんばしく」ない(内閣府「保育サービス価格に関する研究会」報告書、二〇〇三年)、という現実もみえてきます。

収入の違いでうまれる格差

 保育制度をすべて民間にゆだね、もうけの対象になったら、どうなるでしょうか。

 小泉内閣が「待機児童解消」などをかかげながらすすめてきた公立保育所の民営化、保育所の設置・運営への企業参入の現実のなかで明らかになっています。

 株式会社が事業拡大になると思えば保育分野に参入し、もうけがでなければ撤退、そんな事態が各地ですすんでいます。「企業が経営する保育所が突然廃園」(神戸)、「サラ金の子会社が認証保育所を開設したものの採算がとれずに撤退」(東京)など、保育への責任放棄が平然とおこなわれているのです。

 それは、アメリカの保育事情を見ても明らかです。アメリカでは、全国的な最低基準や公費負担制度もありません。圧倒的に企業か非営利法人が運営しています。最低基準は州ごと、入所は保育所と保護者との直接契約、保育料はサービスに応じた自由設定となっています。

 結果は、高い保育料を払えば質の高い保育、保育料が低ければ質の低い保育しか受けられない状況になっています。子どもたちが受ける保育の質が保護者の収入によって違ってくる格差がうまれているのです(保育行財政研究会編著『市場化と保育所の未来―保育制度改革どこが問題か』参照)。

 「認定こども園」の導入は、「保育料が自由設定になれば、家庭が払えるお金によって、子どもが受けられる保育に格差が生じかねない」(「保育園を考える親の会」代表普光院亜紀、「読売」二月六日付)という不安を現実のものにする危険性をはらんでいます。

 「就学前の教育・保育を一体として捉え、一貫して提供する新たな枠組み」という名目で、国民の願いとは逆に、保育所をもうけの場にするという財界の要求実現の足がかりにすることなど、到底許せるものではありません。

(党女性委員会事務局 坂下久美子)

(おわり)


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