2006年4月24日(月)「しんぶん赤旗」
認定こども園を考える(上)
親の願いに応えられるか
「認定こども園」法案(就学前の子どもに関する教育・保育等の総合的な提供の推進に関する法律案)が国会で審議されています。
「保護者が働いている、いないにかかわらず入所できる」「待機児童解消につながる」などの声もあります。しかし、法案には保育制度の根幹にかかわる大きな問題が含まれています。
新サービスの提供というが
いま、就学前の子どもたちが通う施設には幼稚園と保育所があります。認可保育所は児童福祉法にもとづく児童福祉施設であり、幼稚園は学校教育法にもとづく教育施設です。これに新たな「サービス提供の枠組み」としてつくられようとしているのが、「認定こども園」です。
この「認定こども園」は、「教育・保育を一体的に提供する」「子育て支援をおこなう」という二つの機能を備える施設とされています。これを都道府県知事が認定するという仕組みです。
具体的な施設の形は四つあります。(1)幼稚園と保育所が連携した施設(2)幼稚園に保育所の機能をプラスした施設(3)保育所に幼稚園の機能をプラスした施設(4)東京の認証保育所など、地方が独自の基準でおこなってきた地方裁量型の施設―です。
政府は当面一千カ所程度を見込んでおり、十月一日施行を予定しています。
保育料金は自由設定に
現在、認可保育所への入所と保育料は市町村が決めています。保育料は、国の基準にもとづいて市町村が設定、徴収しています。保護者の所得に応じた保育料です(応能負担)。
これまで保育所入所の場合は、保護者が市町村に申し込みをしていたのが、「認定こども園」の入所は、希望する施設に直接申し込み、契約する形になるのです。
保育料も施設の自由設定になります。保育時間や利用する教育・保育内容などの「サービス」に応じて料金を払うことになります(応益負担)。
入所を希望しても、「保育料をどれだけ払えるか」が基準となり、保育料によって入所を考える事態も生まれてくることが予想されます。
待機児童解消に役立つのかどうかも疑問です。「積極的に施設の新設を意図するものではない」とされています。現在、待機児童の多くは離乳食を必要とする〇―二歳児ですが、調理室の設置が「望ましい」程度では対応もできません(総合施設モデル事業評価委員会の「最終まとめ」、二〇〇六年三月)。
内容や施設は安心できる?
保育内容や施設の条件はどうでしょう。
法案は、幼稚園を所管している文部科学大臣と保育所を所管している厚生労働大臣が定める基準(指針)を「参酌」して、都道府県知事が条例で定めるとしています。
「参酌」とは、「いろいろな事情、条件等を考慮して参照して判断する」(四月十四日。衆院文部科学委員会)ということです。現在の「最低基準」のように、この基準を満たすべきという義務づけではありません。
しかも、法律成立後に作成する「指針」のもととなる文書(モデル事業評価委員会「最終まとめ」)は、調理室の設置以外の基準についても、「保育所と同様の職員配置が望ましい」「〇―二歳児については、保育士資格を有する者が望ましい」と明確な基準や規制がありません。
国基準以下の施設でもよいという政府の立場は、四つ目の形に、東京都の認証保育所を例に地方裁量型を組み込んだことにも示されています。
東京の認証保育所は、国基準では大都市での設置が困難などを理由に、都独自の基準を設定しています。日本共産党都議団実態調査(〇二年)でも、都の調査(〇四年)でも、保育料の高さとともに、施設の狭さや園庭がないなどの問題が浮き彫りになっています。
現在の保育所の「最低基準」は、保育現場の実態からかけはなれ、国際的にみても不十分です。政府が、その水準さえも、「認定こども園」制度の導入でさらに引き下げようとしていることは重大な問題です。
(国民運動委員会・大田みどり)
(つづく)