2006年4月23日(日)「しんぶん赤旗」

在沖米海兵隊 本当に8千人移転?

経費負担の根拠なのに

政府、実数把握せず


 額賀福志郎防衛庁長官は、二十三日午後(日本時間二十四日早朝)にもラムズフェルド米国防長官と会談し、在日米軍再編で焦点になっている在沖縄海兵隊のグアム移転費について、決着をはかる構えです。

 米側はこれまでの協議で、グアム移転費の総額を百億ドル(約一兆二千億円)とし、このうち75%(約九千億円)の負担を日本に要求しています。この百億ドルという経費を積算する根拠となるのは、兵員約八千人、家族約九千人という移転人数です。しかし、本当にこれだけの人数が移転するのか。その肝心なことについて、政府・防衛庁は説明不能に陥っています。

実質2千人?

 防衛庁は、沖縄に配備されている米海兵隊員の定員は一万八千人であり、八千人をグアムなどに移転させ、沖縄に残るのは一万人になると説明しています。

 しかし、実際に沖縄に駐留している海兵隊員は「一万八千人」なのか。日本共産党の赤嶺政賢議員が衆院安全保障委員会(三月十六日)でただしました。

 赤嶺氏 (沖縄に米海兵隊員は)現実に今何人いるのか。

 大古和雄防衛庁防衛局長 今イラクに沖縄の海兵隊も派遣されている。(沖縄に今いる)具体的な人数は日々動いており、承知していないが、本来沖縄にアサインされている人数(定員)が一万八千人であるとアメリカは説明している。

 つまり「一万八千人」というのは、米側が説明する数字にすぎません。しかも日本政府は、その説明をみずから吟味もせず、実際に沖縄にいる海兵隊員数について、把握さえしていないのです。

 在日米軍司令部は、本紙の問い合わせに対し、現時点での沖縄の米海兵隊の兵力は一万二千五百人と回答しています。一万人を残すといえば、移転されるのは、実質二千―三千人。政府が主張する八千人の三分の一にすぎません。

米数字うのみ

 防衛庁は、約八千人の海兵隊員とともに、家族約九千人も移転させると説明しています。

 一方、在日米軍司令部は、ホームページで日本にいるすべての海兵隊員の家族の人数を公表しています。その人数は、米海兵隊岩国基地(山口県)に配備されている海兵隊員の家族も含め、一万四百八十人です。

 防衛庁の説明通り移転すれば、残る海兵隊員は一万人もいるのに、家族は七分の一に激減し、わずか千四百八十人になる計算です。しかも、岩国基地分をのぞけば、さらに家族は少なくなります。

 それまで海兵隊員二人に一人以上は家族がいたのに、移転後には、七人に一人しか家族がいなくなる――。にわかに信じ難い数字です。ここにも、米側から示された数字をうのみにするばかりの政府の卑屈な交渉姿勢がうかがえます。

 額賀長官は訪米前に「国民に対し、説得力を持つ形をつくるために努力する」(二十日)と述べました。

 そもそも米国内にある米軍基地強化の費用を負担するということは、世界にも類例がありません。そのうえ、国民向けには、米側の水増しした数字をおうむ返しに説明することしかできない日本政府の姿勢の、どこに「国民への説得力」があるというのでしょうか。(田中一郎)


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