2006年4月22日(土)「しんぶん赤旗」

「対テロ戦争」

“避難民苦境に陥れる”

UNHCR難民白書で告発


 【ロンドン=岡崎衆史】国連難民高等弁務官事務所(UNHCR)は十九日、「二〇〇六年版難民白書」を発表し、各国政府が「対テロ戦争」の名で軍事行動を正当化し、避難民を増やし苦境に陥れていることを告発するとともに、多くの正当な難民がテロリストや不法移民として受け入れを拒否されていることに警鐘を鳴らしました。

 白書は、二〇〇四年の難民総数が過去二十五年間で最も低い約九百二十万人となったことを紹介し、軍事紛争の解決で難民の帰還が進んだことを理由に挙げました。

 ただ、多数の難民は解決の展望がないまま苦しい生活を強いられていることや、一九八二年に百万人余だった国内避難民が、現在推定で少なくとも二千五百万人に急増したことも指摘。国内避難民の増加は、内戦で市民が標的にされていることや避難民の受け入れを各国が拒否していることなどが理由だとしています。

 一方、紛争が減少傾向にあるものの、〇一年九月の米同時テロ後の「対テロ戦争」が紛争に「新しい局面」を加え、「新たな軍事攻撃強化を正当化することに使われてきた」と指摘。こうした地域に、イラク、アフガニスタン、ロシアのチェチェン、インドネシアのアチェ、パキスタン、パレスチナなどを挙げています。紛争地域の避難民が、国境封鎖やテロ対策法の下で避難先の国から強制的に帰還させられるなどの非人道的な扱いを受けていることを明らかにしました。

 また、治安やテロ対策に関心が強まる中で、「難民資格の中心要素、その権利と責任に疑問が投げかけられつつある」と指摘。「亡命希望者がますます、迫害を逃れる難民として保護を与えられるのではなく、不法移民や潜在的テロリスト、犯罪者、最低でもいんちきだとみなされている」と先進国の対応を批判しました。

 白書は、事態打開のために、難民を生み出す国の政治的問題の解決とともに、目標を定めた開発援助の重要性を強調しています。


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