2006年4月20日(木)「しんぶん赤旗」

問題いっぱいの「認定こども園」

法案審議で幼保懇談会が会見


 十一日に国会審議が始まった、幼稚園と保育所の機能を一体化するとした「認定こども園」をつくる法案について、全国保育団体連絡会など七団体が構成する幼保懇談会が都内で記者会見しました。


 「認定こども園」については、各団体がともに「子どもの健やかな成長を願うものとして、今回の法案にはいろいろな課題があり、慎重な審議が必要」としています。

▼▲待機児解消にはつながらない

 全国保育団体連絡会の事務局長の実方(じつかた)伸子さんは最大の問題点として、直接入所方式と保育料の自由設定方式をあげ、現在の保育制度と矛盾するものだと指摘しました。さらに「給食室一つとっても、幼稚園には設置義務がない。審議のなかでは、あることが望ましいとされ、離乳食対応も、家庭の台所程度でいいとしています。今後の保育制度にも波及する恐れがある」と懸念を表明しました。

 日本自治体労働組合総連合(自治労連)の黄木(おおき)祥久子(ひさこ)さんは、待機児ゼロ作戦の名のもとで、定員125%のつめこみ保育が常態化し、足の踏み場もないほどになっていることにふれ、「認定こども園は新たな施設ではなく、既存の保育所、幼稚園の利用の範囲でしかなく、待機児解消にはつながらない」と話しました。

▼▲安定した雇用が必要なのに…

 東京・目黒区で保育所を経営する福祉法人理事長の志村毅一さんは、「国の最低基準では、子どもの安全や発達を保障しきれない。上乗せして人員を配置しているが、保育現場に市場競争が持ち込まれ、保育士の給与を切り下げざるをえない」と厳しい状況を訴えました。「子ども一人ひとりの発達を保障するとともに、親の悩みにこたえることが非常に大切になっている。さまざまなニーズに対応できる保育士集団は、安定した雇用なくしてはできない」と話しました。

▼▲国の最低基準を下回る基準では

 全日本教職員組合幼稚園部の鈴木佳代子さんは、幼稚園の預かり保育について、通常の“教育課程外の活動”と位置付けられ、人員配置も六割程度と指摘。「午睡の部屋があったりなかったり、おやつは市販のお菓子だったり、保育の中身もテレビを見せたりなど、その保育の内容や時間、体制は千差万別です」といいます。

 「幼稚園には、三、四歳の入園までにどんな子育てがされてきたのかというような子どもたちが増えています。核家族のなかで育児不安を抱える親の支援も欠かせない」と話しました。また、「幼稚園の定員は今も一クラス三十五人。今でもクラス運営が大変なのに、国の最低基準を下回るような認定基準には問題がある」といいました。

 最後に実方さんは「この法案は文科省の審議だけになっていますが、保育制度の根幹にかかわる大きな問題なので、厚労省も含めた審議が必要です。子どもの最善の利益が最大限尊重されるよう、財源措置を含めた検討をすべきです」と訴えました。

 *幼保懇談会を構成する七団体 全国保育団体連絡会、全国民間保育園経営研究懇話会、全日本教職員組合、全国福祉保育労働組合、日本自治体労働組合総連合、全日本私立学校教職員組合連合、新日本婦人の会


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