2006年4月20日(木)「しんぶん赤旗」

追及 耐震偽装

再建阻む住民負担

賠償・ローン減免願う声

事件発覚から5カ月


 耐震強度偽装事件は、昨年十一月の発覚から五カ月がたち、「木村建設」(熊本県八代市、破産)、姉歯秀次元一級建築士らの刑事責任を追及する動きが本格化しています。しかし著しく強度が不足し、使用禁止命令がでた十一棟の分譲マンションでは、建て替えなどによる新たな住民負担が、再建の大きな障害になっています。いまだ再建計画も固まらず、十一棟あわせて三百九戸のうち二十三戸(十七日現在)が入居したままです。(阿曽 隆)


 使用禁止命令が出ているのはいずれもヒューザー(東京都大田区、破産手続き中)が建築主。姉歯元一級建築士が強度を偽装し、耐震強度は基準の50%未満で、震度5強の地震で倒壊する危険があります。

11戸がとどまる

 十一棟の一つ「グランドステージ(GS)池上」(東京都大田区)。姉歯元一級建築士が最初に偽装した物件です。二十一戸のうち十一戸がとどまっています。耐震強度は最も弱い部分で45%でした。

 「偽装マンションと確認された時のショックは、まるでがんを宣告されたようでした。建築主のヒューザー、木村建設、偽装を見抜けなかった大田区。怒りは収まらない」と語るのは、同マンションの管理組合理事も務めた男性(51)です。妻と三人の子ども、父の六人家族。近くに手ごろな広さの一軒家が見つかり、十六日までにようやく移転を終えました。家賃は十八万円。

 GS池上が完工した一九九九年。家族が多い男性は、その広さに魅力を感じて即決。月十万円で三十五年の住宅ローンを組みました。

 しかし入居半年でベランダや壁のひびなど、手抜き工事の影響が目に付くようになりました。

 何度も内容証明郵便でヒューザーに問いただしましたが、その都度「違法なものはありません」と木で鼻をくくったような回答をするばかりでした。

病気が一番心配

 建て替えによる追加負担は約二千万円。これまでの月々十万円のローン支払いを三十万円に引き上げ、支払い年数は十五年に短縮します。

 「自分の年齢を考えると支払い年数は延ばしたくなかった。大変ですが生活を切りつめて何とか頑張ります。妻も自分も病気になることが一番心配です」

 二十四戸すべてが退去した「GS稲城」(東京都稲城市)。追加負担は現在のところ二千万円程度の見込みですが、追加負担をより少なくするための模索が続いています。住民からは「姉歯や木村を法に基づいて罰するのは当然。しかしそれでわれわれが助かるわけではない。被害住民の感情とは、かけ離れたことをやっている」という声が出されました。

 強度偽装問題では、「イーホームズ」など、国指定の民間確認検査機関が偽装を見落としたことも明らかになり、国民の命を守る国の責任も問われています。被害住民には「支援」ではなく「賠償」を求める声も強い。

 住民らは、偽装マンションを買った元のローンの元本減免をしてほしいと訴え、再建支援策を国や政党などに求める行動を予定しています。


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