2006年4月16日(日)「しんぶん赤旗」

焦点 論点

公務員賃金の見直し

大きすぎる社会への影響


 民間企業の賃金実態を調べて毎年、政府に国家公務員の賃金勧告を出している人事院が、ことしから調査対象を変えて公務員賃金を大幅に引き下げる動きを強めています。

歯止めなき賃下げ社会へ

 これまで「百人以上」だった民間の従業員規模を「五十人以上」に広げるという研究会報告が三月に出ました。賃金が低い小規模企業に調査対象を広げることで公務員の賃金水準を一気に下げようというねらいです。

 いま日本は、小泉「構造改革」のもとで非正規雇用化、労働者の賃金ダウンがすすみ、貧困と格差の拡大による社会のゆがみが深刻化しています。賃金でみれば、二〇〇〇年から四年間で十一兆円も下がっています。公務員も例外ではなく「官民格差」を是正すると称して連続して賃金が下げられました。

 新たに比較する「民」の規模を「百人」から「五十人」に広げるとどうなるか。日本は、支配的な力をもっている大企業と、そのもとで締め付けられている中小企業とでは、賃金や労働条件に大きな開きがあります。たとえば厚生労働省の「毎月勤労統計調査」(二〇〇四年)をみると、百人から四百九十九人規模に比べて、三十人から九十九人規模の賃金が現金総額で六十四万六千円も低いというのが現実です。調査対象の小規模化は公務員賃金の劇的な引き下げにつながります。

 民間であれ公務員であれ賃金が下がるということは、生活設計を狂わせる大問題です。いや応なしに節約を迫られ、その結果、消費が冷え込み、経済に重大なマイナス効果をもたらします。とくに人事院勧告は、直接には国家公務員が対象ですが、その影響は地方公務員など七百五十万人に及ぶだけに重大です。

 つづいて中小企業に波及します。「せめて公務員並み賃金を」という中小企業で働く労働者の目標が下がるのですから、低賃金の改善は遠のくばかりか、逆に下がることにさえなります。

 さらに生活保護基準や、最低賃金法にもとづく地域最低賃金の引き下げということにもなりかねません。まさに悪循環です。日本は歯止めなき賃下げ社会に踏み込むことになります。

かちとった歴史覆す企て

 「公務員の賃金は高すぎる」とさかんに宣伝する財界の意図は、この悪循環の道を開くことにあります。公務員賃金がもつ社会的な影響に目をつけて、これを攻撃して引き下げ、労働者全体の賃金を下げやすくしようというわけです。こういう財界の尻馬にのって、何の根拠もなく、ただ賃金を下げるだけのために調査対象を広げるようなやり方は、絶対にあってはならないことです。

 もともと「民」の規模は、一九六四年までは「五十人以上」でした。これを労働組合の「官民一体」のたたかいで今日の「百人以上」に改善をかちとった歴史があります。人事院の方針は、それを四十二年前に逆戻りさせるものです。

 人事院がこんな無謀に走る背景として、民主党の前原誠司代表(当時)の言動にふれないわけにはいきません。昨年九月の特別国会で、小泉首相に「改革を競い合いたい」といい、人事院勧告について「零細企業も含めた民間給与の実態をふまえたものとすべきではないか」と主張し、民主党を支持してきた連合労組に衝撃を与えました。

 民主党の否定的役割をのりこえて、連合の公務関係労組は官民比較の見直しに反対を表明し、全労連の各労組も反対で一致しています。

 かつてともにたたかってかちとった成果が崩されようとしているいま、ヨーロッパのような大きな共同のたたかいへの発展が期待されています。(昆 弘見)


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