2006年4月6日(木)「しんぶん赤旗」

主張

産科不足

“安心の出産”の声に応えよ


 「産院の存続を」「産科の再開を」―。全国各地でこんな声があがっています。病院で産科の休廃止が相次ぐもとで、住民の地域ぐるみの運動が広がっています。

 この四月から、市立病院の産科が再開された大阪府八尾市では、有権者の16%にあたる約三万五千人の署名が力になりました。

 WHO(世界保健機関)とユニセフ(国連児童基金)が「赤ちゃんにやさしい病院」と認定している市立産院の存廃問題がもちあがった熊本市や長野県上田市では、十万人規模の署名が産院を存続させる力となりました。

国と自治体の責任で

 住民も自治体も、産科医師が身近に存在し、必要な時にいつでも受診できることを望んでいる―。昨年十二月に厚生労働省がまとめた報告書でものべていることです。

 ところが、現実は深刻な事態が進行しています。自治体の中核病院からの産科撤退により、妊婦が車で一時間、二時間もかかって医療機関に行かなければなりません。陣痛で移動中の車中での出産や、出血があっても受診をためらい治療時期を逸してしまう例が相次いでいます。沖縄県の石垣島を含む八重山郡では、出産できる病院が四月からなくなるという事態も起きています。

 産婦人科をもつ病院が、一九九六年から二〇〇四年の間に26・4%も減少しています。とくに国立病院での減少率が高く、33%にのぼっています。産婦人科を持つ病院のうち、国公立病院が占める割合が四割以上にのぼっていることを考慮すれば、国と自治体の責任はいっそう重大です。

 熊本市の市立産院のように、「行革」の一環として、産院の廃止を打ち出す自治体も少なくありません。命に直結するとともに、少子化対策にも逆行する産院・産科の廃止は、住民の安全と福祉の増進をすすめるべき自治体の役割放棄です。

 政府は、妊娠から出産直後までの周産期医療のネットワークを整備し充実するとしています。しかし、日本共産党の穀田恵二衆院議員の質問にたいし、政府は、ネットワークの中心を担う地域周産期母子医療センターでも、過去一年間に出産を休止した施設が相次いでいることを認めました。こんな事態を放置するわけにはいきません。

 厚生労働省の調査では、一九九四年と二〇〇四年を比べ十年で、医師総数が約四万人増加しているのに、産婦人科医師は逆に約九百人減少しています。

 増加している医師総数をとってみても、日本は国際的にみて少ないのです。人口千人当たり二・〇人で、OECD(経済協力開発機構)平均二・九人の約三分の二です。日本は三十カ国中二十七番目です。

体制整備と予算措置を

 国が医師過剰として医師養成を抑えてきたことが、医師不足の背景にあります。診療報酬の引き下げによる経営難が、医師を労働強化に追い立てています。

 女性医師が年々増えていますが、安心して出産・育児をしながら働ける環境づくりは皆無に等しい状況です。

 新しい命の誕生は、家族の喜びであるとともに、社会の宝です。

 母子はもとより、社会全体が、身近で安心して産める場所を求めています。

 「安心して産みたい」という当たり前の願いをかなえられる体制整備と予算措置をとることは急務となっています。


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