2006年3月30日(木)「しんぶん赤旗」

仏・新雇用策

使い捨て自由化 “ノン”

60大学600高校でスト 統一行動300万人

学生・労組 共同のうねり


 フランスで若者の解雇を容易にする新雇用策「初採用契約」(CPE)の撤回を要求する学生・労働者のたたかいが広がっています。二十八日に行われた二月以来四度目になる労組と学生団体との共同行動には、労働総同盟(CGT)の発表によると仏全土で三百万人(パリ七十万人)が参加し、あくまで「CPE撤回」要求を拒否するドビルパン首相を追い込んでいます。(パリ=浅田信幸)


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(写真)28日、仏政府の新雇用策撤回を要求する全国ストで パリのデモに参加した若者たち(浅田信幸撮影)

 「CPEは労働法典の根本的変更に手をつけるものだ。初めてすべての企業に、正当理由がないまま解雇する可能性を導入している」―社会問題の専門家であるベルナール・ブリュネ氏は語っています。

 ドビルパン首相が一月半ばに打ち出したCPEは二十六歳未満の若者を対象に、通常一―三カ月の「試用(見習い)期間」を二年間とし、この間、解雇を自由にすることで、企業の採用意欲を高めようという措置です。企業には社会保障費負担分が三年間免除され、新採用者の若者には住宅費融資や契約破棄の場合の失業手当受給資格を有利にする措置も盛り込まれました。

 フランスの二十九歳以下の若者の失業率は23%。ほぼ四人に一人が就職できないという現実が長く続いています。この問題の解決にドビルパン首相は、規制を緩和し市場に任せれば雇用は増えるとする新自由主義的な発想に基づき「二年間の解雇自由」という前例のない措置を打ち出したのです。

続く全国行動

 「若者だからという理由で二年間、経営者の勝手放題の解雇が認められるCPEが押しつけられるのは、若者への差別であり、若者を使い捨て労働者にするものだ」と、全国高校生連合(全高連)のステケル委員長は怒りの声を上げました。また労働者の権利を切り下げ、「不安定雇用を制度化するもの」として、労組もそろって反対を表明。最有力労組のCGTは「現代の奴隷制」とまで非難しています。

 CPEの提案直後から、学生団体と労組との共同闘争が組まれてきました。CGTをはじめ六労組と全国学生連合(仏全学連=UNEF)、全高連が一月二十四日、共同して「CPE撤回」を統一スローガンに、二月七日の全国統一行動を呼びかけたのが始まりとなりました。

 以来二カ月間に、労働者と学生の共同した全国行動は四回。ほかにCGTが単独で呼びかけ、学生たちが合流した全国行動一回、学生・高校生が呼びかけ、労働者も加わった全国行動が三回と、毎週のように全国的なデモが行われています。労学共同の行動を見ると、二月七日の第一波四十万人、三月七日の第二波百万人、同十八日の第三波百五十万人(いずれも主催者発表)と回を追うごとに参加者数も増加しています。この間、全国八十四大学のうち六十を超える大学で、また四千三百の高校のうち六百を数える学園で、学生ストや占拠・封鎖が広がりました。

「撤回」68%に

 世論調査を見ると、一月末には「若者の失業を減らす」と回答した人が過半数で、CPEに理解を示す人が多かったのですが、三月半ばには「CPE撤回」が68%になり、学生たちの行動への「支持」と「共感」も63%の高率に達しています。学校父母会も「子どもたちの明るい未来のために」と学生や高校生の行動に支持の立場を明らかにしました。

手法にも批判

 CPEへの批判は内容ばかりでなく、首相の手法にも向けられています。慣行となっている労組代表らとの事前協議を無視し、国民議会(下院)では審議打ち切りと表決なしの法案採択という憲法にもとづく政府の例外的強権を発動したことがそれです。

 このため「街頭デモより交渉を」の“改良主義組合”といわれる民主労働連盟(CFDT)も、はじめから「CPE撤回」を求めて共同行動に加わり、この期に及んでドビルパン首相が呼びかける「対話」にも「撤回が前提条件だ」との姿勢を崩していません。

 ドビルパン首相は来春の大統領選挙を視野に入れて「行動する指導者」として、CPE実施に政治生命をかけているともいわれます。「譲歩しない」その姿勢が保守支持の有権者の間で74%という固い支持を得ているのも事実ですが、二十八日のデモに示されたように、日を追うごとに世論の間で孤立を深めています。


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