2006年3月30日(木)「しんぶん赤旗」

主張

軍事情報保護協定

目隠し政策は戦争への一里塚


政府は、アメリカと「軍事情報保護一般協定」(GSOMIA<ジーソミア>)を結ぶ方向で検討しています(本紙二十二日付既報)。「共有された秘密情報を保護するために必要な追加的措置をとる」と明記した米軍再編にかんする「中間報告」の具体化です。

 協定締結は、包括的な軍事秘密保護法の制定にもつながります。軍機保護法で国民の目と口をふさぎ、侵略戦争に突き進んだ戦前の誤りをくりかえさせるわけにはいきません。

軍事一体化の深化

 GSOMIAは、アメリカが提供した軍事秘密情報の外部流出防止のための厳しい措置を締約国に義務付けています。現在、GSOMIAと類似の協定が四十あります。

 書類、手書きの文書、写真、録音、メモ、電算装置など形状にかかわりなくアメリカの軍事秘密に関係する情報・資料のすべてを保護対象にしています。日米地位協定の実施に伴う刑事特別法が米軍の任務や計画、部隊編成などに特定しているのと比べ、GSOMIAは無限定です。

 日米軍事一体化が進み、米軍の情報はコンピューターで自衛隊の細部にまで行きわたっています。軍事産業とのつながりも密接です。アメリカがGSOMIAの締結を求めるのは、日米軍事一体化の実態を国民から隠すのがねらいです。

 軍事秘密を口実にして国民を取り締まり、国民の知る権利をふみつけにするGSOMIAの締結はきわめて重大です。

 GSOMIAは、締約国にアメリカと「同等程度の保護」を義務付けています。米防諜(ぼうちょう)法は、秘密にした情報を漏洩(ろうえい)し、入手した「違反者」にたいして、一万ドル以下の罰金または十年以下の懲役という処罰から死刑まで規定しています。協定を締結すればアメリカが、量刑の強化や取り締まり対象の拡大措置を求めてくるのは必至です。

 刑事特別法は、外部の一般国民の探知や収集に「十年以下の懲役」の重罪を規定しています。

 しかし、保護の対象は米軍機密だけなので、これを日米共有の軍事機密にまで拡大するのは確実です。そうなれば、いまは処罰もされない外部の一般国民が、米軍機密情報をふくんだ自衛隊情報を探知、収集したとして弾圧されかねません。

 内部の者の秘密漏洩は、国家公務員法と自衛隊法が「一年以下の懲役又は三万円以下の罰金」と規定しています。GSOMIAを締結すれば刑罰強化のおそれもでてきます。

 すでに防衛庁は、外務省や他省庁、さらには国会で政府の戦争政策を追及する国会議員も処罰対象に加える方針といわれます。

 GSOMIAは、アメリカの軍事秘密主義を法制化する憲法違反の協定です。だからこそ、日米共同作戦態勢が強まった八〇年代後半でさえ、政府は「結ぶつもりも意図もまったくない」(一九八八年五月十七日衆院内閣委員会 岡本外務省安全保障課長)との態度でした。

 アメリカいいなりに、日本を「軍事秘密国家」にさせるわけにはいきません。

憲法九条がかなめ

 アジアと世界では、紛争を戦争ではなく平和的話し合いで解決する方向が大勢になっています。国民の目と口をふさいで、国連憲章違反の先制攻撃戦争に参加する態勢づくりをすすめるのは平和の流れに逆行しています。

 憲法九条を守り、憲法を生かした外交への転換がますます必要となっています。


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