2006年3月29日(水)「しんぶん赤旗」

滞納2カ月で給食停止

申込書配布 保証人記載欄も

山梨・笛吹市の小・中学校


 山梨県笛吹市の市立石和中学校(里吉孝夫校長)と石和南小学校(渡辺明文校長)が、保護者に対して、学校に連絡なく給食費を二カ月滞納した場合、給食を停止すると通知した問題について、県内で批判の声が広がっています。二十八日には、新日本婦人の会山梨県本部が県教育庁を訪ね、通知を撤回するよう要請しました。(菅野尚夫)


 石和中学校は三月上旬に「平成十八年度の給食について(お知らせ)」と「給食申込書」を保護者に出しました。この「お知らせ」は、(1)「給食申込書」に必要事項を記入し、四月十八日までに提出する(2)提出がない場合は「五月以降の給食は受けないと判断」し、「給食を停止いたしますので、五月からは弁当をご持参ください」と通告(3)「笛吹市教育委員会の指導のもと」に実施する―などを明記しています。

 学校長あての「給食申込書」には「何の連絡もせずに二カ月にわたり給食費を滞納した場合には、翌月から弁当を持参させますので、給食を停止して下さい」と明記され、署名、なつ印をさせるもの。「学校より支払いの督促があった場合は、保護者に代わり給食費を支払うことを確約します」と書いた保証人をつけ、申し込むことになっています。

 同中学は石和温泉の観光地の中にあります。同温泉の宿泊客は、この十年で五十万人近くも減りました。観光産業で働く親たちの収入も激減し、深刻な生活困窮をもたらしています。

 三月時点で、石和中の生徒約六百五十人中、給食費の滞納者は二十一人。市内五つの中学校の就学援助制度を利用している生徒百九十四人のうち、同中学校は八十三人(一月現在)います。


「ここまでする?」 批判広がる

 「お金がない子は教育を受けるな! というのと同じもの」と怒るのは笛吹市内の元PTA会長で、「山梨不登校の子どもを持つ親たちの会」鈴木正洋代表(62)です。「憲法や教育基本法に逸脱し、子どもの教育を受ける権利を奪うものです。みんなは給食を食べているのに一人だけ弁当を食べていて平静でいられる子がいるでしょうか。まったく子どもの立場に立っていない」と批判します。

 石和中学の保護者からも驚きと怒りの声が出されています。「学校がここまでするかと驚きました」というのは、四月に中三と中一になる子どもを持つ母親です。「給食が食べられなくなりつらいのは子どもです。実際に父親は失業、母親も入院、払いたくとも払えない人はいます。滞納している保護者には個別に教育的な配慮をして対応すべきです」といいます。

 PТА会員の女性は「学校が滞納をなくすため努力していることは分かります。教頭先生に『給食停止は絶対にしないのか』と確認をしたら、それは絶対にしないといっていました。滞納分は学校が立て替えているとも聞いています。未納の分は市がみるべきです」と行政の責任を指摘します。

 こうした批判に対して里吉校長は「苦渋の選択です」と弁明。また、「車をもっていたり、携帯電話を持っていたりする家庭の子も払っていない。痛い思いを子どもにもさせる必要があります」ともいっています。

 前出の鈴木代表は「払っている人と払えない人に差別を持ち込み、『不公平だ』とあおって対立させる。格差社会を当然だとする論理を教育の場に持ち込んだ最悪のケース。撤回させる運動を広く呼びかけたい」と話しています。

 学校給食については、笛吹市とは反対に、北海道三笠市が四月から、市内六つの小学校の学校給食を全額公費負担(無料)とすることを決めました。少子化対策支援事業として実施し、教育費の負担軽減、子育てしやすい町づくりをすすめることがねらいです。


義務教育は無償

 いのちをはぐくむ学校給食全国研究会代表、雨宮正子さんの話 笛吹市のやり方は、あまりにもひどい。憲法(26条)では「義務教育は、これを無償とする」といっています。学校給食法でも、義務教育をスムーズに進めるため、国や地方自治体は学校給食を保障しなければならない、といっています。格差社会が進み、生活困窮者が増えているとき、北海道三笠市のように「無償」にすることこそ自治体がとるべき方向です。


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