2006年3月29日(水)「しんぶん赤旗」

米上院委 移民規制法案を可決

米各地で抗議行動

米国の身勝手さ非難も


 米上院司法委員会は二十七日、千二百万人とも推定される不法移民に対し、合法的労働や将来の市民権獲得を可能とする移民改革法案を賛成多数で可決し、本会議に送付しました。本会議での審議は週内にも開始される見込みです。カリフォルニア州ロサンゼルス、サンフランシスコ両市をはじめ、米各地で規制強化に抗議する行動が繰り広げられました。

 ロイター通信によると、ロサンゼルスの行動には数千人が参加し、ヒスパニック(中南米系)の学生数百人も加わりました。サンフランシスコでも数千人が街頭を行進し、同市内の連邦庁舎前では数十人の移民と支持者がテントを張り、ハンストを続けています。マサチューセッツ州ボストンでは市内の公園で二千人を超える人が抗議集会を開き、ミシガン州デトロイトでも四千人の抗議デモが行われました。首都ワシントンでも議会議事堂近くで約千五百人が百人を超える聖職者と一緒に抗議しています。

 ロサンゼルスでは二十五日にも主催者発表で百万人(警察発表二十万人)が参加する大規模デモが行われています。

 サンフランシスコのデモに参加したカリフォルニア州オークランド在住のスアレス氏は、一九九七年に不法入国しました。「息子は永住権を取得したが、市民権はなかったのに軍への入隊を申し出ると、米国は喜んで迎え入れた。だが息子は二〇〇三年にイラクで殺された」と、移民に対する米国の身勝手さを非難しています。


「一定期間の雇用」容認

 不法移民規制問題は、十一月の中間選挙を前に、米国を揺るがす争点に浮上してきました。

 ロイター通信によると、米上院司法委員会が二十七日に可決した法案は、不法移民取り締まり強化を目指す下院採択の法案に「一定期間の雇用」を認める修正を施しています。これは、三年間程度の期間の労働許可証を与えて期限切れ後は帰国させるというブッシュ大統領の「ゲストワーカー計画」を取り込んだものです。

 ブッシュ大統領は、「米国は移民で構成された国だ」「移民は米国経済を支えている」と述べ、修正を促していました。

 ブッシュ大統領の計画は期限切れ後の帰国をうたっていますが、今回の可決案は、不法移民の永住権、市民権取得にも道を開いています。

 ただ、民主党のケネディ上院議員とともに上院司法委可決案に賛成した共和党のグラム議員は、「市民権取得には十一年かかり」、英語習得や納税のほか、罰金や犯罪チェックの規定も盛り込まれているとも述べています。

 昨年十二月に採択された下院法案は不法入国を重大犯罪とし、ほう助者や雇用主にも厳罰を科し、対メキシコ国境に膨大なフェンスを築くなど、取り締まりのみを眼目にしたものでした。

 ブッシュ大統領の計画も上院司法委可決案も、下院案と同様、不法移民の取り締まりと国境警備の強化を重視する点では同じです。しかし与党・共和党の多数派は、「一時雇用」容認について、不法移民に恩赦を与えるに等しく、その数をさらに増やす「法的誘因となる」だけだと反発し、強硬姿勢を取り続けています。(居波保夫)


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