2006年3月28日(火)「しんぶん赤旗」

共産党の予算論戦

国民の利益最優先に

野党らしい質問に反響


 衆院、参院を通じた予算審議のなかで、小泉政治のゆきづまりぶりが外交でも内政でも浮き彫りになりました。その一方、民主党がメール問題で「『4点セット』追及 トーンダウン」と報じられるあり様。そのなか、日本共産党は、米軍再編、医療改悪、格差、談合、BSE(牛海綿状脳症)など国政の焦眉(しょうび)の課題をとりあげて追及しました。問題の根源をついた志位和夫委員長(衆院、一月二十四日)、市田忠義書記局長(参院、同二十五日)の代表質問以後の二カ月余、「たしかな野党」の存在を示す論戦を、参院段階の審議を中心にみると―。


BSE

米の違反記録を暴露

 日本政府は、BSE(牛海綿状脳症)感染の恐れがあると知りながら、米国産牛肉を国民に食べさせてきた―。日本共産党は、農水省がひた隠す数々の秘密を、国会で白日のもとにさらしました。

 紙智子参院議員は国会質疑に先立つ二月、米国でBSE問題の調査にあたりました。ワシントンでは米農務省や市民団体などと懇談。農務省では、安全管理体制をめぐり、二時間もやりとりしました。調査の成果は、質問に生かされます。

 紙氏は、米農務省食品安全検査局が作成した「BSE違反記録」を入手。三月八日の参院予算委員会で膨大な文書の中から、日本に輸出している食肉工場が、農務省が定めた危険部位除去手続きに常習的に違反していた事実をあばきました。

 紙氏は、米国のずさんな安全管理体制を指摘し、政府を追及。中川昭一農水相や川崎二郎厚労相は、概要報告を受けただけだと認め、内閣府の食品安全委員会も、まったく議論せずに、“ゴーサイン”を出したことが明らかになりました。

 紙氏は四日、米国でBSE牛が確認される一年も前に、農水省が、感染の恐れを指摘する文書を作成していたことを公表。農水省は釈明に追われ、日本農業新聞(七日付)が「米国BSE 発生一年前に指摘」と報道。『週刊現代』(四月一日号)も、「武部勤幹事長が握り潰した『狂牛病リポート』」「44ページの黒塗りペーパー」と取り上げました。

耐震偽装

救済機関の設立提案

 相次ぐ偽装の発覚、建設業界にまん延する安全よりもコスト削減の風潮――。耐震強度偽装事件は、建築行政に大きな問題を投げかけました。しかし国土交通省が当面検討している法改正は「懲役刑を設ける」など、建築士の罰則強化が中心と報じられています。

 そうしたもとで日本共産党は、仁比聡平議員が「政府の規制緩和がその(安全軽視の)風潮を後押しした」(九日、参院予算委員会)と指摘したように、安全をないがしろにする政府の規制緩和万能路線の転換を求めています。

 小林みえこ議員は、二月三日の参院国土交通委員会で、住民の安全を守るはずの建築確認を株式会社に丸投げした結果、自治体の現場では担当者が削減されている問題を取り上げました。

 規制緩和の誤りを認めない政府は、偽装事件に「国の過失はない」として、住民への補償もしない姿勢です。既存制度を活用しただけの「支援」策にとどまっています。

 政府の「支援」策にもとづく自治体のマンション建て替え案は、住民に二千万円以上もの追加負担を求めています。

 小林氏は、住民が抱える既存の住宅ローンを軽減するために救済機関の設立を提案(十四日、参院予算委員会)し、「住民に寄り添い、国が責任を果たすこと」を求めました。

米軍再編

「住民の気持ち代弁」

写真

(写真)パネルを示して、米軍岩国基地の強化・騒音問題で 質問する市田忠義書記局長=3月7日、参院予算委

 予算審議と並行して進んだ在日米軍再編の交渉と、それに反対する全国での運動。日本共産党は、全国の運動を励ますとともに、計画が大きな国民負担になることも告発しました。

 NHKが中継した市田忠義書記局長の質問(七日の参院予算委員会)には、「日本の住民の気持ちを代弁して堂々と(質問を)やられたことに泣けてきた。さすがに日本共産党だと泣けてきた」など、視聴者から共感の電話や電子メールが党本部などに次々寄せられました。

 市田氏が取り上げたのは、在日米軍再編で岩国基地(山口県岩国市)に空母艦載機部隊を移転しようとしている問題です。

 市田氏は、移転計画の是非を問う岩国市の住民投票(十二日)を前に、岩国基地が常駐機数で世界最大級の基地に強化されることなどを明らかにし、「日本の空から米軍機による爆音被害をなくしてほしいという願いに応えるのが政治の役目だ」と訴えました。

 住民投票は、投票者数が有権者の半数を大きく超えて成功し、うち約九割が移転「反対」の意思を示しました。

 井上哲士議員は、在沖縄海兵隊のグアム移転経費について、米側が見積額を当初の三倍の百億ドル(約一兆二千億円)にもつり上げ、日本側に負担を求めていることを批判。在日米軍再編経費の総額が三兆円に上ると報じられていることも示し、きっぱり拒否するよう迫りました(十七日の参院予算委)。

 民主党議員が、三兆円の経費を「防衛費から出すのではなくて、別枠で予算を組んでいく必要がある」(長島昭久氏、十六日の衆院安全保障委)と、負担の歯止めをなくす方法まで手ほどきしたのとは、まったく対照的でした。

グラフ

談合

文科省疑惑にも注目

 防衛施設庁の官製談合事件で、日本共産党は「高級官僚の退職後の生活『防衛』のために、国民の税金が使われた」(市田書記局長、三月七日)ことを追及してきました。

 同じ構図が文科省にもあることを浮き彫りにしたのが、二十三日の井上哲士議員の参院予算委員会での質問です。

 井上氏は、文科省発注の文教施設工事を担当する文教施設企画部のOB名簿から、OBが天下りしている企業と文科省発注工事の関係を調査。四年間で一億円以上の工事七十一件のうち四十八件、契約金額で80・2%を天下り企業が受注していることが分かりました。

 さらに井上氏は、施設工事のうち空調などの「管工事」に携わる会社に天下りしたOBの会「櫟(くぬぎ)の会」の存在を暴露。

 管工事十九件のうち十六件を「櫟の会」企業が受注、入札参加企業すべてが「櫟の会」の三件の工事で落札率が平均95・8%など談合の疑いを提起しました。

 この質問は「文科省の天下り企業に受注集中」など全国紙五紙をはじめマスメディアがいっせいに報道。「すごい資料だ」「該当の工事案件を教えてほしい」などの感想や問い合わせがありました。

医療

「命に格差」つけるな

 「お金のあるなしで命にまで格差をつけるのか」―小泉内閣の医療改悪法案の危険な中身を正面から突いたのが日本共産党です。

 医療改悪法案は、高齢者の患者に新たな負担を強いるとともに、保険内診療と保険外診療を併用する「混合診療」の本格導入に道を開くもの。保険の適用されない医療が広がれば、お金のない人が医療から排除されてしまいます。

 「日米財界のもうけのために、なぜ国民が負担をおしつけられなければいけないのか」。三日の参院決算委員会で小池晃政策委員長は、米国系保険会社が「公的保険適用外の治療費への備えが必要」と大々的な宣伝を行っていることなどを具体的に示し、日米財界が医療改悪法案を後押ししている姿を明らかにしました。

 この追及をテレビ中継で見た視聴者からは「医療改悪にぞっとした。『命に格差』のある社会なんてとんでもない」との反響が寄せられました。

 衆院厚生労働委員会で、高橋千鶴子議員が療養病床に入院する高齢者の負担増を追及。参院予算委員会では紙智子議員が、療養病床を二十三万床も削減する高齢者犠牲の実態を告発しました。

 日本共産党は二月二十三日、医療改悪法案に反対するアピール「社会的連帯で医療大改悪をはね返そう」を発表。多くの医療団体などと対話と共同を重ね、医療改悪を阻止するたたかいに全力をあげています。

雇用

「最賃以下」の収入も

 小泉「構造改革」で労働法制の規制緩和がすすみ非正規労働者は大幅に増えました。小泉首相は、「いわれるほど格差は大きくない」などと開きなおっています。

 日本共産党は、格差拡大の事実を示し、その根源に規制緩和万能路線があることを告発。非正規労働者の実態と権利の向上を求めました。

 吉川春子議員は、パートなど非正規労働者は、正社員にくらべて賃金が四割、格差が年々開いている事実を示しました。

 さらに、吉川氏は、非正規労働者の賃金を支えている最低賃金の引き上げを求め、北海道のタクシー労働者が規制緩和のなかで、最低賃金以下で働かされている実態を告発しました。

 北側一雄国土交通相は、「最低賃金を下回ることはあってはならない」、川崎二郎厚生労働相は「法にてらしてきちんと対応する」と答弁しました。

 笠井亮衆院議員は、「月百時間以上の残業」や経営者が就業規則をコピーさせない会社があるなど「十九世紀にタイムスリップしたかのよう」な青年の実態を“代弁”して質問。傍聴した首都圏青年ユニオンや日本民主青年同盟の人たちは、「自分たちの思いをいってくれてよかった。答弁も思ったより前向きだった」「かっこよかった。あのまま団体交渉に使える」という喜びの声をあげました。

グラフ

サラ金批判に大臣も同調

 「サラ金は金利1%で調達したお金を20数%で貸している。なぜこんな暴利が許されているのか」

 十五日の参院予算委員会で大門実紀史議員の質問に対し、与謝野馨金融相は「近ごろ不愉快なことはテレビにサラ金業者の広告が堂々と載っていること」とサラ金批判に踏み込みました。この答弁をテレビ・新聞もいっせいに報じました。

 「毎日」二十七日付の世論調査コーナー「日本のスイッチ」では、この与謝野金融相の意見に「そう思う」という人が六割です。

 規制強化を骨抜きにしようとサラ金各社は政界工作を強めています。自民党、公明党、民主党はサラ金業界の政治団体にパーティー券や機関誌を買ってもらい、業界の意向を代弁する議員を抱えています。

 業界の圧力をはね返して金利規制を実現するよう求めた大門氏に対し、小泉首相は「高金利をむさぼる業者に被害を受けないような対策を超党派で講じなければならない」と明確に答弁しました。


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