2006年3月27日(月)「しんぶん赤旗」

社会リポート

なぜ情報流出?

ウィニー 対策甘い公的機関

捜査資料や自衛隊機密…被害深刻


 警察や自衛隊、裁判所など公的機関から、ファイル交換ソフト「Winny(ウィニー)」を介してインターネット上への情報流出が相次いでいます。一度ネットに流れた情報の回収は不可能です。深刻な事態がここまで広がったのはなぜか―。


 別表にあるように情報流出は後を絶ちません。警察から漏えいした資料のなかには、性的犯罪被害者の名前や捜査情報なども含まれており、被害は深刻です。

私有PCからネットに流れ

 重大情報の漏えいは、警察官や自衛官らの私有パソコンからでした。ウィニーを利用する私有パソコンを仕事に使ったため、仕事上の重要情報がネット上に流れ出たのです。

 ウィニーそのものは、パソコン内の特定の場所にあるファイルを交換する仕組みです。しかし、「アンティニー」などと呼ばれる暴露ウイルスに感染すると、特定場所以外の情報までウィニーのネットワークに公開されます。回収は事実上、不可能です。

 「ウィニーなどの交換ソフトは、情報を取るのに便利だ。しかし、暴露ウイルスに感染する危険は避けられない」。ファイル交換ソフトに詳しいフリーライターはいいます。

 「ウィニーの検索キーワードで『個人情報』とか『機密情報』などと打ち込むと、驚くような情報が入ってくる」。問題になっている警察や自衛隊の資料、さらに個人の履歴書、社員寮の名簿…。これらの多くは、暴露ウイルスに感染したパソコンから流れ出てきたものだと、フリーライターは解説します。

 政府は昨年十二月、政府機関が保有する情報管理徹底のために「政府機関統一基準」を策定。私有パソコンでの業務データ利用禁止、重要情報の持ち出し禁止など流出防止策の徹底をはかりました。しかし、現実には、情報流出は続いています。

 こうした事態の背景に、公務用パソコンの不足があります。情報流出した防衛庁や警察では、業務用パソコンが少ないために、多くの私有パソコンが使われているのが実態だといいます。業務用パソコンが普及している場合でも、「持ち帰り残業」でデータを持ち出し、自宅のパソコンから流出した事例もあります。

「ウイルスに 注意払って」

 ウイルス対策などを推進する独立行政法人「情報処理推進機構」(IPA)の担当者は、「ウィニーの入ったパソコンは、中身が筒抜けだというぐらいに思ったほうがいい。業務用と私用パソコンの区別を徹底することが、情報を流出させないための基本中の基本」と指摘します。

 同時に、「ウィニーを入れてなくても安心できない」(IPA担当者)ともいいます。ファイル交換ソフトを使用していなくても、データ流出する新たなウイルスが生まれています。代表的なものが、今年に入ってから急速に広がっている「山田オルタナティブ」と呼ばれる暴露ウイルス。これに感染すると、感染したパソコンのすべての中身が他のパソコンから見られる状態になってしまいます。

 IPA担当者は、こう強調します。「あやしげなサイトには近づかないことです。そして、ウイルス対策ソフトを最新版にするなど、ウイルスに注意を払ってほしい。しかし、個人の問題以上に行政機関や企業が、情報流出防止にもっと本腰を入れることが求められています」

表

 ウィニー パソコンの使用者同士がインターネットを通じて、文書や音楽、映像などをやりとりできるファイル交換ソフト。利用者は六十万人以上とみられます。ヒット曲やゲームソフトが無料で入手できるため、開発した元東大助手は、著作権法違反ほう助の罪に問われています。


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