2006年3月27日(月)「しんぶん赤旗」

ゆうPress

大学3年から就職活動30社

厳しい内定への道

「自分を否定された気がする」 募るストレス


 今年の春、新社会人になる大学生たち。「景気回復」といわれていますが依然、就職活動の厳しさは変わりません。就職活動を三年生から始めた神奈川県の大学四年生、河本裕さん(22)=仮名=の場合は――。(伊藤悠希)


 河本さんが就職活動を始めたのは二〇〇五年三月です。受けた企業はこれまでに三十社。銀行、証券会社の金融業界を中心に、大企業から中小企業まで、とにかくかたっぱしから受けました。

 受けた会社の八割は三次試験まで進むことができました。最終面接まで進んだのは二社です。「絶対内定がもらえる」―自信がありましたが、かないませんでした。

毎朝、情報集め

 毎朝、大学やネットカフェで就活サイトをチェック。大学のSPI(一般常識試験)対策講義やガイダンスを受けます。就活のマニュアル本は身なりや態度をチェックするために利用。面接での受け答えは自分の頭で考えました。

 「封筒が厚いのはだめです。封を切る前にだめだってわかるんですよ」。不採用通知の封筒は履歴書などが入っているため厚くなります。不採用通知には、「今回はそちらのご要望にそぐわなかったため、ご遠慮させていただきます」の三行の文字。「『ご要望』ってなんだって思いますよ」。また一からやり直しです。

 「不採用」の通知を受けたあとは、大型バイクに乗って高速道路を突っ走り、叫び声をあげ、ストレス発散。料理を作るのも大事な解消法の一つでした。料理中、なべの中のあくを取りながら自分をみつめなおします。何が悪かったのか。これからどうするのか――。

 河本さんは昨年の五月後半から就活をやめます。会社からの不採用通知が来るのが怖かったからです。「自分を否定された気がして…」

 過度のストレスでひきこもりになってしまいました。昼のテレビ番組が終わるころベッドから出る生活が続きます。時間を無駄にしたとまた落ち込みました。

将来が見えない

 昨年の十一月にバイト先を就職先に決めた友達や、今年の一、二月にやっと決まった友達。三月初旬でも同じゼミ生の半分は未定です。「新卒なのに受からない。これはどういうことなんだって思います。正社員ばかり希望してたからかな」。新卒で派遣社員になった知り合いもいます。

 就職活動を再開したのは昨年の十一月です。正月に実家に帰ると両親から「早く決めろ」と言われます。「自分だって早く決めたい」と思うし、失業給付をもらいながら職業訓練校に通う妹のことを考えると、早く決めて安心させたいと焦ります。

 卒業後は奨学金の返済が始まります。年金の支払いも。就職しなければ生活できない状態です。「仕事は何でもやりたい。でも、将来自分がどうなっているのか想像できないんです」

 三月中旬にやっと就職先が決まりました。


根源は財界・政府の政策

首都圏青年ユニオン顧問弁護士 笹山尚人さんに聞く

 河本さんのような人は今や珍しくありません。不採用通知に、自分が否定された気持ちになる、こんな悲しいことはありません。どんな仕事でも、たとえバイトであっても、安心して働き続けることができる労働条件確保の必要性を痛感します。

 今年の新卒生の就職内定率は、二月一日現在の調査で昨年から3・2ポイント上昇しています。この数字には派遣など非正規採用者の数も入っていると思います。

「即戦力」は無理

 企業は、この間の不況で即戦力を求める「厳選採用」を行っています。それが大学生の就職活動に大きな影響を与えています。

 昔のように採用後、会社の中で教育し、育てる仕組みはありません。かといって、今の教育システムでは、企業が求める技術の備わった学生を送り出すことができるとはいえません。即戦力を求めること自体が無理です。企業が長い目でみていかなければ、彼らの力は発揮できません。

 厳選採用の元をたどれば、一九九五年に日経連(当時)が出した「新時代の『日本的経営』」にいきつきます。この政策は企業が一部の幹部候補生だけを正社員として採用し、あとは身分不安定、低賃金の非正規雇用にしようという発想でつくりました。長期能力蓄積型(月給制、終身雇用)という少数の幹部労働者、専門型(年俸制、有期雇用)、雇用柔軟型(時間給、有期雇用)の三グループに分けるものです。

 この政策は、企業が労働者を丸抱えする終身雇用制という従来のシステムを放棄し、労働者を自由に「出し入れ」できる労働市場の自由化の画期となりました。こうした財界の要請に応え、自民党政府が派遣法を「改正」して派遣の対象を広げ、労働基準法の有期雇用の期限を一年から三年(専門職は五年)に延ばしました。背景には人件費を切り詰め、利益を蓄積するという考え方があります。

積極的な支援策を

 政府は、青年も含め雇用を確保するよう企業に求めてほしい。労働者の生活を守る立場から、企業に対して法の規制を強化すべきです。就職支援サービスをするジョブカフェは全国に五百カ所しかありません。職業訓練では選択の幅を広げ、期間を長くして技術を身に付けられるようにすべきです。政府には積極的な就業支援プログラムを考えてほしいと思います。


お悩みHunter

慎重な性格のせいで時間に遅れそうに…

Q私の悩みは慎重すぎること。例えば、部屋をきちんとしなければ気がすまない性格なので、朝遅刻しそうになったり、あわてることもしばしばです。集団で行動する時も、時間ぎりぎりになってみんなから「遅い」などと言われることもあります。直さなければと思うのですが、何か良い方法はありませんか。(24歳、女性。会社員)

行動に優先順位をつけて

 あれもこれも一気にするというのではなく、いますべきことは何か、優先順位をつけ、あとは切り捨てるようにしたらどうでしょう。自分の思考パターンがどうなっているのかを整理し、気づくことが大切ですね。

 誰にもある時期、このような部分はあって、成人するにつれ直っていくものです。だんだんと適度に「いいかげん」にしていかなければ、やっていられなくなります。

 他の人たちの行動パターンもみて、努力してみたらどうでしょうか。

 また、軽いうつ状態にあるときは思考がまとまらなかったり、物事をきちんとしなければ…と思う傾向があります。疲れすぎると思考が切り替えられなくなり、不安が強くなって「遅く」なるんですね。そういう場合は、疲れている証拠です。無理をして生活しているのかもしれませんので、正すことが大切ですね。


精神科医 上村 順子さん

 山口大学医学部卒。代々木病院、松沢病院などで勤務。99年からめだかメンタルクリニック院長。


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