2006年3月26日(日)「しんぶん赤旗」

主張

原発差し止め

耐震性の抜本的見直しが必要だ


 全国にある原発の耐震性への警告を発する、重要な判決が出されました。

 石川県の北陸電力・志賀原発2号機をめぐる、金沢地裁の原発運転差し止めの判断です。

 判決は、巨大地震が起こると原発事故が発生し、住民が被ばくする危険性を認めました。

「想定」を超える地震

 日本には、建設中も含め五十七基の原発があります。国の原子力安全委員会が定めた耐震基準(一九七八年制定、八一年改定)は、二十五年前のもので、最新の知識に照らしても科学的根拠がありません。裁判では、国の基準にもとづいて設計された原発の耐震性の妥当性が問われました。

 判決は、北陸電力が現実にあわない「想定」で耐震設計を行っていることを批判しています。

 「被告(北陸電力)の綿密な調査で活断層が見つからなかったからといって、本件原子炉(志賀原発2号機)の直下にマグニチュード(M)6・5を超える地震の震源断層が存在しないと断ずる合理的な根拠があるとは認め難い」

 実際、大規模地震が起こる前には、地震を起こす活断層の存在が知られていないという例があります。

 二〇〇〇年十月六日に起きた鳥取県西部地震もその一つで、M7・3を記録しています。

 しかも、政府の地震調査研究推進本部地震調査委員会が、昨年三月、志賀原発2号機の近くにある邑知潟(おうちがた)断層帯について、“将来的にも全体が一つの区間として活動すると推定し、発生する地震の規模はM7・6程度”と指摘していました。

 また、昨年八月の宮城県沖地震では、東北電力・女川原発で耐震設計の想定を超す揺れが観測されています。

 これらの最新の動向を踏まえた原発の耐震設計が必要になっているのに、電力会社はそれらを踏まえていません。

 判決は、「志賀原発2号機の耐震設計には、被告の想定を超えた地震によって原発に事故が起こり、被ばくする具体的可能性がある」と結論づけました。

 運転の差し止めという、初の判決の意味を重く受け止め、国と電力会社は、耐震性を抜本的に強化する見直しを行うべきです。

 想定を超えた地震による原発事故の危険性は、志賀原発2号機の問題にとどまりません。

 日本列島が、地震の活動期に入ったといわれ、全国のすべての原発の危険性が問われています。

 とくに、東海地震の想定震源域の真上にある中部電力・浜岡原発にたいしては地震学者らから強い警告が出されています。

 中部電力が、耐震補強工事の方針をだしていますが、これで耐震性が確保されるのか、懸念されているのです。

最新の知識をもとに

 今回の判決は、運転の差し止めを命じたとはいえ、仮執行宣言がなく北陸電力の控訴により、運転は継続される方向です。

 現実にあわない「想定」では、大地震発生時に、原発の安全性は保障されません。住民の不安は消えることはありません。

 最新の科学的成果をもとに、すべての原発の耐震性の見直しと国の耐震基準の見直しが急がれます。

 それが、今回の判決が示した警告を、真剣に受け止めることにもなります。


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