2006年3月15日(水)「しんぶん赤旗」

防衛庁文書に「戦力」

本紙の指摘に「訂正する」


 憲法の「戦力不保持」規定にあわせて自衛隊を「必要最小限度の実力(組織)であり戦力にあたらない」としてきた防衛庁が、公式文書で「戦力」と明記していることが十四日までに明らかになりました。二十七日から移行する陸海空三自衛隊が一人の指揮官のもとで作戦行動する「統合運用」の説明資料の中にあるもの。

 同資料は防衛庁の公式ホームページに掲載されている統合幕僚会議の「統合運用の検討状況について」。

 統合運用態勢の基本的考え方、新たな統合運用組織(統合幕僚監部の編成)などを八ページにわたって解説。そのなかの「新たな統合運用態勢のキーワード」の項目で「陸・海・空自戦力の総合発揮」と自衛隊が戦力であることを明記しています。

 統合運用は、イラク戦争にみられる先制攻撃型戦争を地球規模で進める米軍再編に呼応、自衛隊を「(海外に)迅速に派遣し、継続的に活動」できる軍事組織にすることをかかげた「新防衛大綱」で具体化されたものです。

 本紙の取材に対し防衛庁は「戦力の記述については誤解を招くので防衛力に訂正する」(内局広報課)としています。


解説

憲法改悪先取り

 「あと〇〇日」。防衛庁が統合幕僚会議のホームページに掲載している統合運用移行日(二十七日)までのカウントダウンです。

 自衛隊はこれまで陸・海・空と別々の指揮系統でした。これからは一人の指揮官、「統合幕僚長」に指揮・命令を一元化、三自衛隊が一体で作戦行動ができるようになります。モデルは「テロ掃討」を口実に海兵隊や陸軍、空軍などが「連携」、市民の無差別殺りくを繰りかえすイラクの米軍です。

 「統合運用」移行が自衛隊にとって一九五四年創設以来の最大の関心事であることは確かですが、「戦力」記述はそうした「高揚感のもとでのフライング」と見過ごせる問題ではありません。

 自衛隊は戦争法(新ガイドライン)を成立させた九九年の夏、自衛隊神奈川地方連絡部が県内市町村の自衛官募集事務担当者会議に「(即応予備自衛官は)常備自衛官に準ずる戦力」との資料を配布。本紙の憲法違反の指摘で防衛庁が「常備自衛官に準ずる役割の遂行」と訂正したことがあります。

 今度はその防衛庁が公然と「戦力」を明記しました。いま自民党や民主党が「自衛隊を海外で戦争のできる軍隊」にするための条件整備、その照準にあてているのが九条第二項「戦力不保持」の「改正」、つまり「戦力」の明記です。防衛庁の「戦力」記述は憲法改悪の先取りとの批判をまぬがれないものです。


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