2006年3月13日(月)「しんぶん赤旗」

主張

行革推進法案

改革と無縁の公共性切り捨て


 小泉内閣が「行政改革推進法案」を決定しました。

 国と地方の公務員を大幅に減らし、賃金を引き下げ、中小企業向けの公的金融を統廃合・民営化して縮小するなど、国民向け公共サービスを削減し、切り捨てる内容です。

標的は国民向けの仕事

 行革推進法案は厳しい数値目標を明記して公務員の削減を掲げています。国家公務員は五年間で5%純減させ、地方公務員は4・6%純減させるとしています。

 国家公務員の削減規模について、小泉首相は次のように説明しています。過去五年間は毎年五百人程度を純減させてきたが、その六倍に当たる毎年三千人以上を減らすということだ―。これまでとは、けた違いの公務員減らしです。

 国家公務員の総人件費の削減は、今後の十年間にGDP(国内総生産)比で半減を目安にすることを盛り込みました。地方公務員の給与も引き下げの方向を示しています。

 日本の公務員は人口に占める人数でも、GDP比の人件費でも主要国の中で最低の水準となっています。公共サービスの貧弱さを示す数字です。やみくもな公務員削減は公共サービスをますます切り縮めます。

 国民から見て無駄な仕事を整理するのは当然です。しかし、法案があげている削減対象の重点分野を見ると、標的は国民生活に密接で不可欠な公共サービスです。

 その一つが教職員です。行革推進法案は児童・生徒の減少に伴う自然減を上回る純減を要求しています。

 少人数学級は、すでに四十六道府県に広がっています。ところが、国の制度が「四十人学級」のままで少人数学級への財源保障がないため、本格的な実施ができないでいます。法案は一刻も早く手厚い教育を必要としている子どもたちの現状を無視し、教職員を減らして少人数学級への逆流をつくります。

 公共職業安定所の職業紹介の民間委託も掲げています。先に国会に提出された「市場化テスト法案」の試行では、人材派遣会社が選ばれています。正社員になりたいと職探しに訪れる大多数の若者たちの願いを受け止めるのではなく、不安定雇用の拡大を推進する事業に職業紹介を変質させる危険があります。

 社会保険料の収納業務も重点分野としています。国民年金の保険料徴収をクレジット関連会社が請け負い、低所得で保険料を払えない人にカードで支払わせ、高利の借金を背負わせるようなことが起きようとしています。

 行革推進法は、こうした公共サービス切り捨てを「推進する責務」を国と地方自治体に背負わせています。国と地方にがっちりと「たが」をはめて個々の標的を撃ち落とそうという狙いです。

耐震偽装の反省もなく

 切り捨てた公共サービスの代償を払わせられるのは国民です。何より政府は「行革」を消費税増税の必要条件と位置づけています。この後に待っているのは庶民大増税です。小泉首相は「行革」で「国民の税負担を軽くする」と言っています。これほどのごまかしはありません。

 「官から民へ」と、行政の責任を放棄して市場任せを極端に進めた結果が耐震偽装やライブドア事件となってはね返っています。小泉内閣は何の反省もなく同じ失敗をもっと大規模に繰り返そうとしています。

 もはや公務員だけの問題ではありません。親と子、民間労働者、失業者、中小業者など社会的に弱い立場に置かれた国民みんなの問題です。


もどる
日本共産党ホーム「しんぶん赤旗」ご利用にあたって
(c)日本共産党中央委員会
151-8586 東京都渋谷区千駄ヶ谷4-26-7 TEL 03-3403-6111  FAX 03-5474-8358 Mail info@jcp.or.jp