2006年2月23日(木)「しんぶん赤旗」

たばこ病から未成年者守りたい

たばこ入手の主な手段

自販機規制を

横浜市の患者らが署名運動

この苦しみ、体験させたくない


 喫煙は、とりわけ未成年者に大きな健康被害をもたらします。入手は多くが自動販売機からです。「肺がんや肺気腫になった私たちと同じ目に遭わせたくない」と、横浜市のたばこ病患者らが「たばこ自販機規制」を求める署名を始めました。(畑野 孝明)


 「これ以上たばこ病死亡者と患者を増やさないでほしい。この苦しみ、死への不安を、将来ある未成年者に体験させたくない。原告団共通の願いです」

肺気腫や肺がん日々死の不安が

 横浜のたばこ病患者三人が、国とJT(日本たばこ産業株式会社)を相手に訴訟を起こして一年余り。原告団代表の水野雅信さんは、署名を始めた理由をこう語ります。肺気腫で酸素ボンベを片時も離せず、提訴時は入院中で出廷することもできませんでした。「今は体調がいいのですが、肺気腫は治らないのです。呼吸機能は着実に低下し、医者には“危機ライン”と言われています。毎日が死の恐怖とのたたかいです」

 原告団事務局長は、肺がんで片肺のほとんどを切り取っている高橋是良さん。副代表は肺気腫で息苦しい生活を続ける森下賢一さん。原告団は、家族や知人に支えられつつ裁判と署名への支援を訴えています。

広がる署名協力サイトも使って

 「署名」は、神奈川県議会に向けたもので、喫煙者も含めた多くの人が一致できるものにしようと話し合い、決めた内容です。撤去を求める自販機は「違法な自販機」です。全国に六十万台以上ある自販機は、未成年者喫煙禁止法(第四条)の「年齢を確認したうえでの販売」という条件に反したものが多数。未成年者のたばこ入手の主な手段となっているからです。「たばこ規制枠組み条約」(別項)も、「自販機が未成年者に利用されないこと」としています。

 「未成年者の健康を守るための署名なら」と、さまざまな団体・個人の取り組みが始まっています。

 横浜市内のある自治会では、役員会で提起したところ、喫煙者も含めて全役員の賛成で署名のとりくみを決定。用紙を全戸に配布し、三百世帯のうち百七十世帯の協力で六百筆以上集めています。岩手県の二十代主婦は、インターネットで署名運動を知り、出身大学を始めとする知人友人、インターネットサイトも使って協力を広めています。横浜市役所職員の労働組合(横浜市従)や新日本婦人の会なども署名にとりくみ始めています。

科学的証拠あるたばこの有害性

 横浜たばこ病裁判の大きな特徴は、非喫煙者・喫煙者を含めた四百人の「応援団」ができていることです。事務局を担当する行政書士本多一公さんは言います。「たばこ病をなくしたいという原告団の熱意に共感しました。応援団のメンバーは、個人の資格で自主的に加わった人ばかりです。命がけで国やJTを告発している原告を、“自業自得”などと見放していたのでは、犠牲者はなくなりません。この署名を広げ、大きな世論をつくって、たばこ病のない社会実現を応援したい」

 弁護団(片山律団長)も、手弁当で協力する弁護士たちで構成しています。最高裁まで争われた「第一次たばこ病訴訟」の弁護団長で、この裁判の弁護団の要でもある伊佐山芳郎さんは言います。「一次訴訟判決は、たばこ規制枠組み条約や国際的常識に反したひどいものです。たばこの有害性や依存性は科学的証拠にもとづき証明されています。横浜の裁判の勝利を確信しています」

 たばこ病をなくす横浜裁判のホームページはhttp://www13.plala.or.jp/tabakobyounin

グラフ

 たばこ規制枠組み条約(FCTC) 各国が、継続的で、実効ある、たばこ規制を実施するための枠組みを提供することを目的とした条約。二〇〇三年に世界保健機関(WHO)で採択され、昨年二月に発効しました。

 「(喫煙と受動喫煙が)死亡、疾病及び障害を引き起こすことが科学的証拠により明白に証明されている」「(たばこは)依存性を引き起こし、維持するよう巧妙に作られている」(前文)ことを明記しています。


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