2006年2月22日(水)「しんぶん赤旗」

主張

耐震偽装

国が責任もち被害者救済を


 耐震偽装事件発覚から三カ月。自宅マンションが突然「使用禁止」と宣告され、退去を求められた被害住民の生活は厳しさを増しています。

 政府は「公的支援」を打ち出したもののきわめて不十分です。危険な建物の解体や建て替えへの補助をおこなっても、被害住民には、部屋の面積を80%程度に縮小したうえ、二千万円強の追加負担を求めるといいます。高齢の年金生活者や二重ローンで生活が立ち行かなくなる住民も多く、到底受け入れられるものではありません。国の責任ある対応が求められています。

「責任」認めぬ政府

 被害住民がいまいちばん悩まされている問題は、「事件の責任、補償の相手先はだれに、どこまでを求めたらいいのか」が定まらないことです。都内で開かれた住民らのシンポジウムでは、悲痛な声が続きました。

 第一義的に責任を負うべきが、ヒューザーなどの悪質業者であることはいうまでもありません。住宅品質促進法によって、住宅の販売者は十年間の瑕疵(かし)担保責任を負うこととされています。偽装をおこなった姉歯元建築士や民間検査機関にたいしても不法行為責任が問えます。

 深刻なのは、ヒューザー、木村建設両社はすでに経営破たん状態で、危険な建物を買い戻すだけでも百五十億円余が必要という資金をまかなう資力が見込めないことです。売り主、施工者らの責任を明確にしながら、国が責任をもって不動産業界や金融機関の負担・協力を求め、それでも不足するなら政府が補償するなど、被害住民に負担させない救済策を準備することが必要です。

 国会でも、価値ゼロのマンションを担保にローンを貸し付けた銀行の責任、マンションの建設で一括下請負の形で名義貸しをして多額のマージンをとっていたゼネコン、デベロッパーの責任を問う議論が出されています。こうした議論を被害住民の救済に向けていくために、国の責任ある対応が欠かせません。

 北側一雄国土交通相は「今回の支援策は(国に)法的責任があることを認めた上でつくったものではない」とのべ、小泉首相も「支援措置は補償として実施するものではない」といいます。国に責任はないが「公的支援」をおこなっているという小泉内閣の立場が、問題を複雑にしています。

 耐震偽装マンションの建設にお墨付きを与えた建築確認は、「国民の生命、健康及び財産の保護」をうたう建築基準法にもとづくものです。今回の事件は、九八年の同法改悪で建築確認の仕事を民間検査機関に丸投げできるよう規制緩和し、安全が置き去りにされた結果です。

 民間の検査機関がおこなった建築確認をめぐっても、昨年六月の最高裁判決は「民間の指定確認検査機関に委託しても、建築確認は自治体の責務」という判断をしめし、同十一月の横浜地裁判決は「検査機関の故意や過失は自治体が損害賠償を負う」としました。国や自治体の責任はそこまで重いことをふまえて、住民の救済にあたるべきです。

住民を犠牲にするな

 今回の事件は自然災害ではありません。国の規制緩和路線と建築確認制度の不備がもたらした「人災」です。なんの罪もない被害住民が、泣き寝入りさせられる事態があってはなりません。日本の社会が、「安全な住宅に居住する権利」を人権として認めるまともな社会であるためにも、国は現在の公的支援策を抜本的にあらためるべきです。


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