2006年2月6日(月)「しんぶん赤旗」

ロシア警察の拷問初認定

欧州人権裁判所 賠償を命令

誤認逮捕で殴るける、電気イス


 【モスクワ=田川実】仏ストラスブールの欧州人権裁判所はこのほど、警察に拷問されたとのロシア人男性の訴えを認め、ロシア政府に対し二十五万ユーロ(約三千五百万円)を男性に支払うよう命じる判決を出しました。

 これまでロシアの警察による拷問は何度も指摘されていましたが、欧州人権裁判所が事実を認めたのは初めて。裁判を支援した人権団体「メモリアル」のジーナ・ベジェルノバ弁護士は「わが国の拷問をなくす上で大きな意義がある判決」と歓迎しました。

 訴えていたのはニジニノブゴロド市の交通警察官だったアレクセイ・ミヘーエフ氏(29)。

 同市の警察は一九九九年一月、行方不明になった女性の家族からの捜索願を受け、ミヘーエフ氏をレイプと殺人容疑で逮捕しました。容疑を否認する同氏に対し、取り調べ官らは殴るける、さらに電気いすに座らせる拷問を加えました。

 ミヘーエフ氏は容疑を「認めた」とされますが、電気ショックで精神的に混乱。警察署の窓から自ら飛び降り、足に大けがを負いました。

 ところが翌日、行方不明で殺されたはずの女性が「友達のところにいた」と無事帰宅。まったくの誤認逮捕だったことが分かりました。

 車いす生活となり職も失ったミヘーエフ氏は、人権団体の支援を受け、拷問に関与した警官の処罰と賠償を求めて告訴しました。

 明白な警察の失態にもかかわらず、検察はまともな捜査を放棄。ミヘーエフ氏は二〇〇一年、ロシアも加盟する「基本的人権および自由保護のための欧州条約」違反だとして、政府を相手に欧州人権裁判所に提訴、〇四年に審理が始まりました。

 あわてたロシアの検察は、拷問にかかわった警官二人を起訴。裁判所が禁固四年の判決を出しました。しかし、ミヘーエフ氏への拷問には十人以上が関与したとされ、欧州人権裁判所は審理を続けてきました。

 勝訴後にモスクワ市内で記者会見したミヘーエフ氏は「これ以上ロシアの市民が自分のような目にあわないことを望む」と話しました。

 欧州人権裁判所の判決は、ロシア政府が控訴しなければ三カ月で確定。賠償金は判決確定から三カ月以内に支払わなければなりません。


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