2006年2月6日(月)「しんぶん赤旗」

談合事件逆手に省昇格?

施設庁「解体」に動く防衛庁

天下りにメス入れてこそ


 額賀福志郎防衛庁長官は、防衛施設庁の官製談合事件の再発防止策として、同庁の解体・防衛庁への統合を打ち出しています。これで、再発防止になるのでしょうか。


 「施設庁を解体するつもりで出直しを図る」

 額賀長官がこう述べたのは、防衛施設庁幹部が逮捕された日の翌日、一月三十一日未明のことです。

 深夜に及んだ国会が終わった後、防衛庁(新宿区)で開いた記者会見での発言でした。

 この会見で額賀長官は「問題点を洗い出し、再発を防止」することを目的とした検討会を防衛庁に設置すると発表。第一回の会合は、同日午後五時半でした。

 防衛庁内から「検討会を開く前から『解体』なんて、早過ぎるんじゃないの」と皮肉る声があがるほどの“素早さ”。「解体」先にありきの姿勢は露骨でした。

 額賀長官は三日、防衛施設庁の廃止・統合を二〇〇七年度中に実現させる方針まで明言しました(参院外交防衛委員会)。

■問題のすり替え

 「解体」というのは、一見きびしい措置のように見えます。

 しかし、これは問題のすり替えです。

 今回の事件では、逮捕された防衛施設庁ナンバー3の技術審議官・河野孝義容疑者らが、天下りをどれだけ受け入れたかを考慮して、競争入札の落札予定企業を配分し、企業側に伝えていた疑いがもたれています。高級官僚の天下りが、事件の土壌にあることは明白です。

 事件の根を絶つためには、根源にある天下りというシステムにこそ、メスを入れる必要があります。

 ある防衛庁OBも、額賀長官のいう「解体」論に批判的です。

 「『解体』というが(防衛施設庁が担ってきた在日米軍基地工事の)発注をなくすわけではない。機能が防衛庁に移るだけだ。組織をいじって解決できるものではないのだ。天下りがある限り、(業界との)癒着はおきる」

■海外派兵を強化

 それでは、なぜ防衛施設庁の「解体」を急ぐのでしょうか。

 その理由の一つにあるのは、公明党が、防衛庁の悲願である省昇格を受け入れる“条件”として、防衛施設庁の防衛庁への統合を突きつけていたからです。

 施設庁幹部の逮捕前の一月二十五日、草川昭三副代表は参院本会議で、防衛庁の省昇格にあたって「(防衛施設庁を)防衛庁と統合して組織をスリム化すべきではないか」と求めました。

 額賀長官は「極めて示唆に富んだ重要な提案」「防衛施設庁の在り方を含め組織の見直しを図っていく」と答弁。すでに統合に向けて意欲を示していました。

 このとき額賀長官は「省への移行は、自衛隊の海外における活動の実績や評価をも背景とし、国際社会からの期待に的確に応えていこうとするもの」とも説明。つまり省昇格は、政府・防衛庁が推進している自衛隊の海外派兵態勢の強化路線の一環だということです。

 官製談合事件を起こしておきながら、その再発防止策として真っ先に言い出したのが、海外派兵態勢づくりの強化―。これで、国民が納得できるとでも思っているのでしょうか。(田中一郎)


▼防衛施設庁  防衛庁の機関の一つ。在日米軍や自衛隊の基地の土地管理、施設の建設、基地周辺対策などを行っています。防衛施設庁の長官は、防衛庁長官が任命します。全国に八つの防衛施設局を置き、職員数は全体で三千百三人。予算は二〇〇六年度政府案五千二百五十七億円。その半分近い二千三百二十六億円が、「思いやり予算」(在日米軍駐留経費負担)です。


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