2006年2月5日(日)「しんぶん赤旗」

こちら社会部。

過去のカード盗難被害

なぜ解決しない

「金融機関は補償の期限切らないで」


 盗難キャッシュカードによる預貯金不正引き出し問題で、過去の被害についての補償が進んでいない実態が、被害者や対策弁護団などの話から浮かび上がりました。二月十日には金融機関に偽造・盗難キャッシュカード被害の補償を義務付ける預金者保護法が施行します。同法では、法施行前の過去の被害補償を具体化していませんが、付則第二条で「この法律の趣旨に照らし、最大限の配慮」を求めました。被害者からは「本来、金融機関の責任なのだから、過去の被害についても期限を切らずに補償すべき」との声が強まっています。(藤川良太)

 外資系企業に勤める四十代の男性は、二〇〇二年五月、飲食中に座席の背もたれに掛けていた背広の内ポケットから財布を盗まれ、みずほ銀行などのカードを奪われました。支払い時に気付き、あわててみずほ銀行に連絡しましたが、返ってきた答えは「すでにおろされています」。暗証番号は生年月日でしたが、銀行から変更を求められたことはありませんでした。財布には免許証など暗証番号が推測されるものは入っていなかったといいます。被害額は五百万円を超えました。

■説明一切なし

 翌日、警察に被害届を提出。クレジットカードの被害分約七十万円はカード会社の保険で補償を受けました。みずほ銀行とも交渉しましたが、「お気の毒ですが補償できません」と拒否されました。

 男性は昨年八月、同法成立のニュースを知り、みずほ銀行に自分のケースについて問い合わせると、「補償の対象ではない」と門前払い。その後十一月に被害の対策窓口ができ再度、交渉しました。しかし回答は「総合的な観点から補償は行わないことを決定しました。今後個別的な対応は行いません」。盗難被害について、なぜ補償しないのか、説明は一切ありませんでした。

 大手銀行は、同法施行を前に補償への取り組みについて相次いで発表。一月十九日に発表したみずほ銀行は、過去の盗難補償対象を、「めどとしては、二〇〇四年一月ごろの被害まで」としました。本紙の取材に対し、同行は「国会審議や法律の盗難カード被害の補償期間(二年間)などをもとに判断した」としています。二年以上前の事案について、みずほを含めた大手各行は「個別に状況、内容を聞き判断したい」と話しました。

■すべて未解決

 被害救済にあたる預貯金過誤払い被害対策弁護団が扱う盗難カード事件七十八件、すべてが未解決です。一方、偽造カードについては、すべて補償済みと言います。同弁護団事務局次長の喜多英博弁護士は、「二年以上前に盗難に遭った被害者も当時、すぐに銀行に被害を届けています。盗難カードの被害はカードができたときから発生しています。それにもかかわらず金融機関が対策を怠ってきたのが原因です」と批判します。

 被害者でつくる「ひまわり草の会」の中林由美江代表も「過去の盗難被害も期限を切らずに、事件性が証明できる限り補償してほしい」と訴えています。 


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