2006年1月11日(水)「しんぶん赤旗」

ワシントン・コンセンサスとは?


 〈問い〉 第24回党大会決議案にある「ワシントン・コンセンサス」とは何ですか?(福岡・一読者)

 〈答え〉 「ワシントン・コンセンサス」という言葉は、1989年にアメリカの国際経済研究所(IIE)のウィリアムソンが、最初に用いた言葉です。ラテンアメリカに必要な経済改革として、ワシントンを本拠とするアメリカ政府、IMF(国際通貨基金)、世界銀行などの間で成立した「意見の一致(コンセンサス)」を指します。

 彼によればその内容は、(1)財政赤字の是正、(2)補助金カットなど財政支出の変更、(3)税制改革、(4)金利の自由化、(5)競争力ある為替レート、(6)貿易の自由化、(7)直接投資の受け入れ促進、(8)国営企業の民営化、(9)規制緩和、(10)所有権法の確立――です。当時、IMFや世銀はこうした考えにもとづく改革を、その国に融資するさいの条件としていました。

 こうした条件にあわせて急進的な市場自由化プログラムを導入した80年代からの南米諸国や、90年代の旧ソ連・東欧諸国では、著しい経済の後退が起きました。とくに97年の東アジア通貨危機では、IMFの勧告に従ったタイ、インドネシア、韓国などで、失業の急増、多くの企業の経営破たん、国民生活向け予算の削減が行われ、国内経済の混乱を大きくしました。

 世界銀行の副総裁をつとめ、ノーベル賞を受賞した経済学者のステグリッツは、金融市場や資本の急激な自由化が、通貨危機の最大の原因だと指摘し、「IMFが押しつけた政策は、状況をいっそう悪化させた」とワシントン・コンセンサスを批判。IMFの勧告を拒否して国内経済の混乱を抑えたマレーシアや、南米諸国、そしてEUは規制緩和・市場原理万能とは異なる政策を追求しています。

 その後、世界銀行も、従来の路線を見直し、貧困の削減、国家の役割の評価、市民社会とのパートナーシップを強調するようになりました。しかし自由化・民営化の押しつけの状況や、アフリカ・中東への「自由経済」拡大をめざすブッシュ政権の戦略との関係を踏まえて評価する必要があります。

 ワシントン・コンセンサスは、いまでもアメリカの対外経済戦略や新自由主義の考えを示す言葉として用いられています。(洋)

 〔2006・1・11(水)〕


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