2005年12月28日(水)「しんぶん赤旗」

西岸の入植地を拡大

ガザ「緩衝地帯」設置

イスラエル

「和平逆行」と反発 パレスチナ


 【カイロ=小泉大介】来年一月末のパレスチナ評議会選挙を前に、イスラエル政府はヨルダン川西岸地区で大規模入植地を拡大、ガザ地区では「緩衝地帯」を設置しています。同国のシャロン首相は十一月に右派与党リクードを離党し中道新党「カディマ」を結党、中心政策に「パレスチナ国家樹立」を掲げています。しかし、現場で続く力の政策にパレスチナ側は、和平に逆行する動きだとして反発を強めています。

 イスラエル住宅省は二十六日、西岸のパレスチナ自治区ベツレヘム近郊でベタルイリト入植地に百五十戸、エフラト入植地に七十八戸の新規住宅を建設するため入札を公示しました。

 首相府のギシン報道官は同日、この計画は五年前からあったと説明すると同時に、「(ヨルダン川西岸の)大規模な入植地群は強化される」と明言。西岸での入植地維持・強化の方針に変更がないことを認めました。

 国連、欧州連合、米国、ロシアが作成した中東和平のための「ロードマップ(行程表)」は、第一段階で、イスラエルにすべての入植活動の凍結を求めており、今回の行為は明白な違反です。パレスチナ自治政府のアリカット交渉責任者は、「和平プロセスをむしばむものだ」と厳しく非難しました。

 一方、イスラエル放送は二十五日、シャロン首相が、パレスチナ自治区であるガザ地区内の北部に「緩衝地帯」を設けるよう軍に指示したと伝えました。イスラエルは今年九月、ガザから軍と入植者の撤退を完了させましたが、その後パレスチナ過激派がイスラエル領にロケット弾攻撃を加えています。「緩衝地帯」は攻撃を防ぐための措置とされます。しかし、「緩衝地帯」が設置されれば、ここへの「侵入者」をイスラエル軍が無条件で攻撃することが可能となります。

 ガザ撤退は、和平への第一歩としてイスラエル、パレスチナ双方から期待されましたが、パレスチナ側は今回の動きを、ガザ再支配の一歩と受け止めています。

 パレスチナ解放機構(PLO)主流派最大組織ファタハは二十六日に声明を発表。イスラエルの計画を「パレスチナの主権に対する深刻な脅威」とし、国際社会が介入し、「イスラエルの拡張政策」をやめさせるよう要求しました。

 パレスチナ人の間では、シャロン政権の一連の強硬策が、結果的にパレスチナ評議会選挙で過激派組織の躍進を後押しすることになるとの見方も出ています。


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