2005年12月27日(火)「しんぶん赤旗」

特急転覆

強風域 緩い運行規制

JR東 基準適用、支社長任せ


 山形県庄内町のJR羽越線で、特急「いなほ14号」が転覆した事故は、死者四人、負傷者三十二人の惨事となりました。国土交通省航空・鉄道事故調査委員会と山形県庄内署捜査本部は二十六日、合同で現場検証を実施。線路の状況や鈴木高司運転士(29)が「強風が吹き、車体が浮き上がった」と話していることから強風をうけて全六両が脱線、このうち三両が転覆した可能性が強まりました。


■死者4人に 負傷32人

図

 JR東日本は同日、記者会見のなかで、二段階に設定している強風対策のうち、弱いほうの規制を事故現場付近に適用していたことを明らかにしました。国鉄の分割民営化で風速による運行規制の基準が緩和され、鉄道各社まかせになりましたが、「風の通り道で強風常習地帯」に、なぜ甘い基準を適用し、時速約百キロでの走行を許したのか、運行管理のあり方が問われます。

 風速による運行規制は、一九八六年の山陰線余部(あまるべ)鉄橋脱線事故後、当時の国鉄が運行中止の風速を二〇メートルとしました。その後、国鉄は民営化。基準は鉄道各社が決めるようになりました。

 JR東によると、強風での運行規制基準は一般規制で、風速二〇メートルで警戒、二五メートルで徐行、三〇メートルで運行中止となっています。一方、通称「早め規制」と呼ぶ、より厳しい基準では、一五メートルで警戒、二〇メートルで徐行、二五メートルで運行中止となります。場所によって、どちらの規制になるのかは「各支社長が決める」といいます。

 JR東管内の風速計は合計二百二十二カ所、うち「早め規制」の風速計は四十一カ所でした。事故が起きた羽越線では、合計十六カ所あり、一カ所が「早め規制」でしたが、事故現場は一般規制でした。

 また、風速計が第二最上川橋梁(きょうりょう)自体に設置されていなかったことも分かりました。同社は事故現場に一番近い風速計は、現場と川を挟んで反対側の橋から、三十五メートル離れた地点に設置していたと説明。その風速計は事故当時、風速二〇メートルを観測していたといいます。風速計は水平方向の横風を測るもので、吹き上げる垂直方向の風は測るようにはなっていませんでした。


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