2005年12月19日(月)「しんぶん赤旗」

ゆうPress

防ごうHIV感染

大学生グループの啓発活動

「恋愛ゲーム」で対話


 国内でエイズウイルス(HIV)に感染する人が増え、昨年は過去最高となりました。特に、新たに感染した人の七割が二十―三十歳代です。性交渉をもつ人なら誰でも感染の可能性があるHIV。どうすれば身近な問題としてとらえてもらい、感染を防ぐことができるのか。大きな課題となっています。(中村美弥子)


■都内で活動する 「アデオジャパン」

 じわりと広がるHIV感染を身近な問題として考えてほしいと、同世代の人たちに予防を呼びかけている大学生グループがあります。東京都内で活動する「アデオジャパン」。

 「アデオジャパン」は、アフリカで保健医療や教育を提供する非政府組織(NGO)の日本事務局です。非営利、非宗教の団体として二〇〇三年、発足。〇四年夏ごろから日本のHIV/エイズの予防啓発活動に取り組むようになりました。

 代表の天野憲哉さん(23)は「アフリカ諸国はエイズ対策では先進国で、若い人向けの教育がしっかり確立されています。日本でHIV感染が広がっていると知ったとき、アフリカのノウハウを日本でも実践できないかと思いました」と説明します。

 安井功さん(21)は国際協力に関心があって、かかわるようになりました。「これまでエイズは外国の問題だと思っていましたが、活動を通して、これは僕らにとっても大きな問題だと気付かされました」と振り返ります。

 「アデオジャパン」は、HIV/エイズ予防啓発活動で「ピア・エデュケーション」を重視しています。英語の「ピア(peer)」は、年齢や地位などが同じ仲間という意味。若い人同士が対等な立場で対話し、問題を共有する方が、年配の人が教えるよりも効果が高いと、海外でも実証されている方法です。

 それでも、いきなりHIV/エイズ予防と切り出しても、なかなか関心をもってもらえないといいます。コンドームを前面に出すと敬遠されることもあります。そのハードルを下げるためにつくったのが「恋愛シミュレーション」というゲームです。

 ゲームの主人公は二人の学生。サークルの飲み会の場で、二人の関係をどう進めるかクイズで聞いていきます。このゲームを通して「コミュニケーションとコンドーム使用」というメッセージを発信しています。

 「ゲームだとHIV/エイズ予防の話に入りやすい」。稲垣朝子さん(21)は実感を込めていいます。

 「学園祭やイベントで『恋愛シミュレーション』という看板をブースの前に立てると、“これ何だろう”と興味をもってもらえます。それをきっかけにして私たちと話をすると、“これまでよくわからなかった性のことがわかった”という反応がありました」

 安井さんは「僕らが直接話をできるのは一日に四、五十人程度です。地道に続ければ一人ひとりに広がっていく可能性はあります」と話します。

 天野さんも「僕らの話を聞いた人が、友達との会話のなかで話題にしてくれればうれしい。その輪が広がってくれれば」と展望をもっています。


▼HIVとエイズ HIVはヒト免疫不全ウイルス(human immunodeficiency virus)の略で、エイズウイルスとも呼ばれています。主にセックスで感染します。ウイルスは、体の抵抗力(免疫)を少しずつ破壊し、カリニ肺炎などを引き起こします。このような症状が表れた状態をエイズ(後天性免疫不全症候群)と診断しています。ウイルスの潜伏期間は約十年。複数の薬を服用することでエイズの発病を抑えることができます。


■予防啓発予算をもっと

■HIV陽性者への直接支援、予防啓発と研究・研修の三本柱で活動するNPO法人「ぷれいす東京」代表 池上千寿子さん

 日本は性の情報にすごくオープンです。漫画も深夜のテレビ番組も性の情報であふれています。しかし、セクシュアル・ヘルスに関するものは一切なく、メディアは性的な刺激をあおっています。性が健康の問題としてとらえられていないのです。自分の性といかに上手に付き合うかという発想はなく、性についての情報が偏っています。

 こういう日本で性感染症にかかる人が増えるのは、当たり前です。

 今、社会で大きな課題となっているのがセクシュアル・ヘルスです。望まない妊娠をしないとか、性感染症にかからないとか。いかに自分を性的によりよい状態に保つかは学習しなければ身に付きません。

 思春期の人たちに、先輩としておとながどんな支援をできるかが問われます。そういう意味で、社会環境を整備するのがおとなの役割です。

 現在、日本のHIV感染者の数は報告されている人の倍以上はいると考えられていますが、社会全体に危機感がありません。国でも地方でもHIV/エイズ予防啓発予算はカットされています。

 日本の感染者の数は他国に比べればまだまだ低いレベルです。少ない段階での予防への投資が最終的に一番有効だということに気付いてほしい。感染者が増えると医療費だけでなく、もろもろの社会負担が大きくなります。いかにいまのレベルで感染を抑え込めるかが課題となっています。

 「ぷれいす東京」はHIV/エイズについて相談窓口を設けています。http://www.ptokyo.com/


■増える国内の感染者・患者

 「二〇〇四年エイズ発生動向」(厚生労働省エイズ動向委員会)によると、昨年、国内で新たに報告されたHIV感染者は七百八十人で、エイズ患者は三百八十五人でした。感染者、患者とも過去最高の報告数となりました。

 年齢別にみると、二十―三十四歳にHIV感染者が集中しています。エイズ患者では、二十五―五十四歳と幅があります。男性がHIV感染で八割、エイズでは七割を占めています。


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■お悩みHunter

■ビィトンのバッグを欲しがる私って変?

 Qもうすぐ二十代におさらばです。いま欲しいのがビィトンの黒のバック。これを持って街へ出たら、胸を張って堂々と歩けるんだけど…。でも十三万円もするんです。人間は中身だと思うけど、ブランドものって私には大事なもの。こんなのっておかしいですか?(29歳、女性、東京都)

■“あなたブランド”見つけて

 Aあなたの欲しいバッグがビィトンであってもなくても、あなたが本当に心の底から自分にぴったりで、「このバッグは自分のためにつくられた物だわ」と思ってしまうほどの物であれば、お金をためて、きっと購入するでしょう。

 でも、あなたの悩みの根本は、ビィトンのバッグを買う、買わないではないようですね。

 あなたはもうすぐ三十代だから、世間で「よい物」とされている高級ブランド品を身につけなければ、自分自身のステイタスを保てないと、不安に感じてビィトンが欲しいと思ったのではないでしょうか。

 でも、その世間とは、ほんの一握りの先進国と言われている国の、そのまたセレブなどといわれているほんの一部の人々の価値観ではないかと私は思います。

 私はあなたに、そんなちっぽけな価値観に惑わされることなく、あなた自身の“あなたブランド”を見いだして欲しいと思います。

 十三万円あったならば、いろいろなことができるのではないでしょうか。この地球上には、水さえなくて死んでしまう子どもたち、おとなが起こした戦争に苦しみ続けている子どもたちがたくさんいます。

 あなた自身の価値観をどこに見いだすのか、あなた自身の中に見いだすか、ビィトンのバッグに見いだすか、もう一度じっくり、あなた自身に問うてみてはいかがでしょうか。


■舞台女優 有馬 理恵さん

 「肝っ玉お母とその子供達」など多くの作品に出演。水上勉作「釈迦内柩唄」はライフワーク。日本平和委員会理事。


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