2005年12月17日(土)「しんぶん赤旗」

橋梁談合・初公判

天下り、受注に直結

検察指摘 メーカー大筋認める


 旧日本道路公団や国発注の鋼鉄製橋梁(きょうりょう)工事をめぐる談合事件で、独禁法違反(不当な取引制限)と背任の罪に問われた旧公団元副総裁の内田道雄(61)、元理事の金子恒夫(58)両被告らの初公判が十六日、東京高裁(高橋省吾裁判長)で開かれました。検察は冒頭陳述で、「高値安定受注」をねらう橋梁メーカーと談合に関与することでOBを“天下り”させてきた官製談合の癒着構図を明らかにしました。


 冒頭陳述によると、一九九三年ごろまで、旧公団には橋梁工事の入札談合に関与する橋梁担当理事が存在し、自ら各工事の受注予定会社を「割り付け」ました。「割り付け」では、旧公団OBを受け入れた橋梁メーカーを有利に扱いました。

 一九九三年ごろゼネコン汚職事件が発覚し、橋梁担当理事が自ら「割り付け」するのをやめた際には、「高値安定受注のために入札談合の継続」を望んだ橋梁メーカーの談合組織主要メンバーが協議。有力OBに受注予定会社を「割り付け」てもらう仕組みを決めました。橋梁担当理事はその「割り付け」結果を承諾することで、従来通り橋梁メーカーにたいする旧公団の優越的地位を維持し、橋梁メーカーはOBを受け入れることで高値安定受注をすることができたのです。

 起訴状などによると、旧公団ルートで内田被告はメーカー側と共謀し、二○○三―○四年度の橋梁工事で談合。金子被告は○四年度のみ。メーカー側は六社と五人が起訴されました。内田、金子両被告は○四年度の第二東名高速道路「富士高架橋」(静岡県)工事の分割発注を指示して約四千七百八十万円を余計に支払わせ、旧公団に損害を与えました。

 国土交通省ルートではメーカー四十九社(○四年度は四十七社)が国交省の橋梁工事(○三―○四年度)で談合。二十六社と担当者八人が起訴されました。

 罪状認否で内田被告は「すべて否認」と無罪を主張。金子被告も否認しました。旧公団元理事の元横河ブリッジ顧問・神田創造被告(71)らメーカー側十人と二十六社は大筋で認め、宮地鉄工所と担当者は旧公団ルートへの関与を否定しました。

 内田、金子両被告は談合事件の独禁法違反で発注側として初めて受注者側との共同正犯に問われました。


■消えない談合組織

■解説

 検察側の冒頭陳述によると、橋梁(きょうりょう)メーカーは一九五〇―六〇年代にかけて、最初の談合組織「紅葉会」や「あづま会」などをつくり、実に半世紀近く談合を続けてきました。九一年には、談合資料が外部に流出し、いったんはこれらの談合組織を解散する決議もしました。しかし橋梁メーカーは、入札談合による高値安定受注をはかり、談合組織を存続しました。

 ゼネコン汚職が発覚した九三年ごろ旧日本道路公団側が「天の声」を出すのをやめた際も橋梁メーカーは、有力OBが受注予定会社の「割り付け」をする新たな“方式”で談合を継続しました。

 昨年十月、公正取引委員会が立ち入り検査に入りました。談合組織の幹部らは、受注予定会社を変更するなどして談合を継続。これには財界有力企業の新日鉄や三菱重工まで含まれ、三菱重工の担当者が談合組織の幹部に「抜けるなんて一言もいってない。何か工事を下さいよ」といったという、新事実も冒頭陳述には記されています。

 高値安定受注のために談合を続けた橋梁メーカー―。その原資は国民の税金や通行料です。橋梁メーカーとOB天下りをねらう発注者の姿勢が問われています。(山本豊彦)


もどる
日本共産党ホーム「しんぶん赤旗」ご利用にあたって
(c)日本共産党中央委員会
151-8586 東京都渋谷区千駄ヶ谷4-26-7 TEL 03-3403-6111  FAX 03-5474-8358 Mail info@jcp.or.jp