2005年12月16日(金)「しんぶん赤旗」

それでも居直るのか 小泉・自公政権

イラク戦争の大義 総崩れ

米大統領、誤情報認める


 ブッシュ米大統領がイラク戦争の開戦理由とした大量破壊兵器保有の情報に「多くの誤り」があったことを認め、「攻撃を決断した責任がある」と表明しました。米政権の言い分をうのみにして、開戦前からイラクの大量破壊兵器「保有」を断言し、戦争を支持してきた小泉・自公政権の誤りはもはや隠しようがありません。

 (西尾正哉)


■「保有」を断言…

 小泉純一郎首相は開戦前後、「大量破壊兵器を持っているイラク」(メールマガジン、二〇〇三年三月十三日)、「問題の核心は、イラクが自ら保有する大量破壊兵器、生物兵器、化学兵器を廃棄しようとしないこと」(同三月二十七日)などとし、イラクの大量破壊兵器「保有」を断言。どの国よりも早く米国のイラク戦争を支持しました。

 与党・公明党も「スプーン一杯で二百万人の殺傷力がある炭疽(そ)菌が約一万リットル」(冬柴鉄三幹事長)などとイラクの「大量破壊兵器の脅威」をあおって小泉首相を後押しし、イラク戦争の正当化に努めてきました。

 その後イラクが大量破壊兵器を保有していなかったことが明らかになっても、小泉政権は、国民を欺いてきた責任を認めないばかりか、戦争を支持した誤りも認めず、開き直ってきました。

 小泉首相は〇四年一月には、「持っているともいないとも断言できない」と「保有」断言を撤回。今年一月には「私も、あのころはいずれ見つかるんじゃないかと思っていた。しかし結果的にはないということ」と述べ、イラクが大量破壊兵器を保有していなかったことを認めました。

 しかし、「思いと予想と見込みは外れる場合がある」などと述べ、イラク戦争を支持したことは「正しかった」と一片の反省もありませんでした。

■「合理的判断だ」

 そして、今回のブッシュ大統領の演説を受けてもなお、「イラク攻撃の支持は合理的な判断だった」(安倍晋三官房長官、十五日の記者会見)と主張しています。

 安倍長官は「イラクが過去に大量破壊兵器を使用した事実」を見れば「大量破壊兵器があると想定するに足る理由があった」とし、「武力行使は関連する安保理決議に基づき行われたもので、国連憲章に合致している」などと正当化しました。

 しかし、イラクによる過去の大量破壊兵器の使用については、小泉首相自身がイラン・イラク戦争やイラク北部のクルド人の町ハラブジャでの一九八〇年代の二例をあげただけ。結局、「一九九一年以降、イラクが大量破壊兵器を使用したとは承知していない」と認めています。(〇四年十月)

 “武力攻撃が国連決議に基づいている”との言い分も事実経過からウソが明白です。イラク戦争開戦前、米英スペインは国連査察を打ち切って武力行使を容認する第二の決議の採択を画策しました。これは、イラクへの武力行使を承認する安保理決議がなかったためで、結局、国際世論の反対に直面し決議採択ができなかったのです。

 イラク戦争では、「三万人前後」(ブッシュ大統領)にものぼるイラク国民が犠牲となりました。大量破壊兵器の保有を理由に開戦を強行したブッシュ大統領自身がその「誤り」を認めた下で、戦争を支持してきた小泉政権の対米従属ぶりと責任はいっそう明白です。


■小泉首相の主な発言

2003年

3月13日

「この問題は…『全世界対大量破壊兵器を持っているイラク』の問題である」(メールマガジン)

20日

「問題は、大量破壊兵器を保有するイラクの脅威に私たちがどう対峙(たいじ)するかです」(同上)

27日

「この問題の核心は、イラクが自ら保有する大量破壊兵器、生物兵器、化学兵器を廃棄しようとしないこと」(同上)

6月11日

「フセイン大統領が見つかっていないからイラクにフセイン大統領は存在しなかったということ言えますか、言えないでしょう。大量破壊兵器も私はいずれ見つかると思う」(党首討論)

2004年

1月26日

「(イラクの大量破壊兵器問題は)今、未解決。持っていないとも断定できない。持っているとも断定できない」「日本が(イラク戦争を)支持したのは、…今でも正しかったと私は思っております」(衆院予算委員会)

2005年

1月27日

「私も(イラク戦争開戦の)あのころはいずれ見つかるんじゃないかと思っていた。しかし、結果的にはないということ。思いと予想と見込みは外れる場合がある」(衆院予算委員会)


■米国内外で高まる批判

 ブッシュ政権が唱えてきたイラク戦争強行の根拠のなさが明らかになるにつれ、同政権の開戦責任と米軍撤退を求める声が米国内外で高まってきていました。

●「反戦の母」らの抗議行動

息子をイラクで亡くしたシーハンさん 「うそとごまかしのため に、どれだけ多くの人が犠牲を払い続けるのでしょうか」(8月 27日)「イラク戦争の『崇高な目標』が何かをブッシュ大統領に 問いたい。米国にとって脅威でない国を占領することが『崇高な 目標』なのでしょうか」(9月10日)

3月19日 開戦2周年で全米数百カ所で抗議行動

8月17日 全米1600カ所以上で反戦・撤兵要求デモ、5万人参加

9月24日 ワシントンで反戦デモ、開戦以来最大の30万人が参加 しホワイトハウスを包囲

●米議会

共和党ヘーゲル上院議員「米国は行き詰まりに陥っている。長く 居座り続けるだけ多くの問題を抱えることになる」「撤退せねば ならない」(8月21日)「イラク戦争に反対しているからといって、 その人を悪者にすべきではない」(11月16日)

民主党マーサ下院議員「この戦争は当初から誤って進められた。 情報が間違っていただけでなく…あらゆる間違いが犯された」  「米軍はイラクから即時撤退すべきだ」(11月17日)

●イラク世界民衆法廷(6月23―27日、トルコ・イスタンブ  ール)

米英両国政府が引き起こしたイラク戦争は「歴史上最も不正義で 不道徳な戦争」の一つとし、ブッシュ大統領とブレア英首相の戦 争犯罪を断定。罪状として、▽国連憲章などに違反して侵略戦争 の最高の犯罪を計画、準備、実行した▽イラクの民間人と民間施 設を攻撃目標にした―ことなどを指摘


■米政権の大量破壊兵器問題をめぐる発言と動き

 2003年2月5日 パウエル米国務長官が、国連安全保障理事会外相級会合で「機密情報」を開示し、「イラクが核兵器計画を断念したことを示す証拠はない」「フセイン大統領は大量破壊兵器保有を続けるだけでなく、さらに製造しようとしている」と断言

 3月16日 ブッシュ米大統領は、大西洋アゾレス諸島でブレア英首相、アスナール・スペイン首相と会談、「イラクの独裁者と大量破壊兵器は、自由諸国の安全にとって脅威である」とのべ、対イラク開戦を主張

 04年9月13日 パウエル国務長官が米上院で大量破壊兵器について「いかなる備蓄も見つかっておらず、将来も見つかりそうにないと思う」と発言

 10月6日 米中央情報局(CIA)要員などで構成する米国のイラク調査グループ(ISG)が報告書を発表。「フセインは91年に核兵器計画を終わらせた」「イラクは91年に未申告の化学兵器を一方的に破壊した」「経済が最低に落ち込んだ95年後半に、イラクは現存していた生物兵器計画を放棄した」と結論づける

■前国務長官も攻撃正当化は「人生の汚点」

 05年3月31日 ブッシュ米大統領が設置したイラクの大量破壊兵器に関する独立調査委員会が、「イラク攻撃前の大量破壊兵器に関する情報のほとんどすべてについて、米情報当局が完全に誤っていたとの結論に達した」とする最終報告書を発表

 9月9日 パウエル前国務長官がテレビ・インタビューで、イラク攻撃を正当化した国連演説は「人生の汚点だ」と語る


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